ダイの大冒険(2020)第56話が放送された。黒の核晶爆発を抑え込んで命を使い果たした父バランとダイが対面し、バランが息を引き取ったところに、大魔王バーンが現れて、戦闘を煽るところまでが描かれた。

今回は話のタイトルが「受け継がれる心」ということで、原作の各話タイトルにもないタイトルがつけられていた。まさに、バランからダイに受け継がれる想い、そしてドラゴンの紋章のことを指しているといえるだろう(もっとも、この時点ではまだ、紋章のことは明らかになっていないが)。

冒頭で、ポップがマァムに首を締められるところ。原作では「3分経過」というギャグが入れられていたが、アニメでは何事もなかったのようにカットされていた。まあこれは漫画的表現だから妥当に思う。

そういえばクロコダインは、バーンパレスの物質について「なんなんだこれは」と突っ込んでいたが、まったくもってなんなんだこの物質は。岩と金属の中間というが、そんなもんがなぜ浮くのだろう。のちに、最終決戦のときに、落下することにはなるが、それまでは浮いていた…。このあたりは単に物質というよりも魔法力となんらかの関連があると思ったほうがいいのだろうか。

そして、バランが灰色になって浮いているところが描かれた。原作漫画では色がなかったので、あくまで線画として印象に残るシーンだったが、カラフルなアニメで見ると、逆に灰色という色になっていることが、生命力がまったく使い果たされてしまったんだということを象徴的に表していると感じた。漫画「あしたのジョー」で、最終試合を終えたジョーが「真っ白に燃え尽きた」ところで漫画が終わるが、どこかそれに通じるものを感じる。

ところでバランが映ったあとで黒い煙がたなびくシーンがあるが、その前には煙は見えていなかったような…。これはどういうことなんだろう。

力尽きようとするバランに、ダイがベホイミをかけてくれとマァムに懇願するシーンがあるが、このシーンのマァムの冷静さはすごい。バランの生命力がないことを見抜いていることもそうだが、仲間であるダイの懇願に対しても冷静に受け止めるとともに、回復呪文は無駄だと諭すのである。これは冷静さと優しさをもっていないとできない。かつて、フレイザード戦でハンマースピアでダイを気絶させて担ぎ、さらにフレイザードに魔弾銃のタマを投げつけて誘爆させるという最高に冷静なファインプレーを見せたマァムだが、それにリンクするものを感じる。マァムはどちらかというと感情先行キャラとして見られがちで、それに対してレオナが、大義のためには目先の感情に流されないリーダーという描かれた方をすることがある。特に象徴的なのは、アバンがキルバーンに決闘に連れて行かれたときにマァムが「冷たいわ」とレオナに言い、ダイたちもそれに乗っかるところ。あとは、ミストが分離したあとで、マァムが逆上して襲いかかり、結果的にミストに乗っ取られてしまうところ。これらのシーンが後にあることで、マァムは感情先行で冷静な判断ができないという印象になりがちなのだが、いやいや全体を見ると、マァムさんはなかなか実はできている。ただ、クライマックスに近いところでそれがなくなってしまったために、全体にそういう印象にされてしまっているような気がする(笑)。

さて、今回最も泣かせにきたシーンは、バランとダイの別れのシーンであるが。このシーンの立役者は、もちろんそう、クロコダインだ。クロコダインがダイの気持ちを汲み取り、さらに言語化をためらっている「父さん」を叫ぶことのきっかけを作ってくれる一言を発する。圧倒的にもう、このときのクロコダインの人間性の素晴らしさには言葉もない。人間よりよっぽど人間らしい優しさをもっていたモンスターとして、バルトスやブラスという存在が、「父」として描かれ、それとバランが対比されていくのがダイの大冒険のひとつの面白さだが、いやはや、クロコダインさんの器というか心は、作中もっとも印象的だと思うのだ。

そういえば、バランが死んだあとでヒュンケルが「バーンのところまでの突破は容易かろう」というところがあるが、後に分かる通り、途中にはキルのトラップがたくさん仕掛けてあり、それを打ち破れる技量の持ち主はこの時点ではパーティーにいない。そう考えると、ここでバーンのところまで向かっていってしまうと、おそらくはトラップにハマってダイの大冒険は終わっていたのではないかと思われる(笑)。そう考えると、わざわざ出張ってきて、ダイたちにバトルをバーンが挑んでくれたことによって、たしかに負けはするもののハドラーの乱入でなんとか逃げ延びることができるので、これが後の勝利につながっていくとも言える。地上消滅計画にしても、遊びすぎたせいで失敗してしまったバーンだが、ここでも実は遊び心でダイたちパーティーの始末をしそこねたことは、記録しておくに値する(笑)。

さて、次回はタイトル「魔界の神」だけど、いわんとすることは「いまのはメラゾーマではない、メラだ」ってことだよね(笑)。


【Podcast】 Cast a Radio 「ダイの大冒険」を語る