ダイの大冒険(2020)第57話が放送された。今回は、大魔王バーンとダイたちの最初の闘いがはじまり、ダイのストラッシュがバーンを直撃するまでが描かれた。

みんな大好きバーンのメラであるが、今回その威力は、漫画よりもアニメとなったほうがよりインパクトがあったような気がする。しかし思い出してほしいのだが、たしかクロコダイン戦あたりでダイが使ったメラの威力描写が、やたらなんか強そうだったこともあり、そっちがすごすぎたのではと改めて思い出した。それに比べれば、そりゃバーンのメラだもんこれくらいだよなぁ、というのは違和感はない。

バーンのセリフがちょっと変わっていて、バランの体に対してメラを放ったあとで「自分で弔いたかったかな?」という発言に変わっていた。原作では「火葬より土葬がお好みだったかな?」だったので。これは視聴者の年齢というか、語彙力に対する配慮なのかもしれない。火葬、土葬というワードが耳で聞いてもなかなかわかりにくそう、という。

あとは、そのあとダイたちに放たれたメラに、ポップがメラゾーマを放つところ。原作では「呪文の連発で抑え込んでおく」と言っていたが、アニメではたんに「呪文で抑え込む」となっていた。まあ実際はポップも連発したわけじゃないので、これはわかりやすく実態に合わせるためにセリフを整えたということかと思う。

マァムが傷ついたダイの身体に回復呪文をかけるところも少しセリフは変わっていた。原作では「ハドラーから受けた傷が・・・」と言っているが、アニメではハドラーというセリフはなくなっていた。これはしかし、考えてみると、マァムはダイとハドラーとの闘いを見ていないので、むしろダイの傷跡がハドラーの攻撃だということが、もちろん想像はつくとはいえ、断言はできないはずなんで、これもまた実態に即したセリフ変更といえる。

そしてカイザーフェニックス登場。ヒュンケルがフェニックスを受け止めるところが、原作でもたしかにがっちり受け止める感じなのだが、アニメではよりしっかりと、受け止める印象になっていた。これはひとつ、漫画とアニメの表現の差異であろうと思う。漫画はコマ割りの大きさによって、読者に対する印象や時間軸をコントロールするが、アニメの場合は画面の大きさは一定なので、あとはコントロールできるのは人物の縮尺、というか遠近感がメインになってくる。そういう意味でいうと、がっしりとヒュンケルが、わりとズームインした感じで受け止めていたのが、ロン・ベルクの作った鎧の魔槍の魔法防御力の高さと、ヒュンケルというキャラの想いを感じさせて良い。
ただまあ、そのあとすぐに2発目のフェニックスが来て、そしてそれが合体フェニックスになることで、結局ヒュンケルは耐えきれたのかどうかよくわからないかんじになるのだが。
実際の所、あの合体フェニックスはどういう形でヒュンケルたちにダメージをもたらしたのかは正直よくわからない。炎に包まれてはいるものの、特に誰も明白なダメージは受けていないような気がする。やっぱり鎧の魔槍の対魔法防御の強さがみんなを救ったのであろうか。しかしそうなるとヒュンケルが「若干こらえられるはず」と若干と言っているのが妙ではある。
その前の時点で、メラでポップの法衣が燃えてしまったということがあり、対魔法防御がある装備だとしても、強大な攻撃魔法には耐えられないのか?という疑問はある。だがそうだとするなら、この合体フェニックスはどうやってしのいだのか?は謎は残る。
のちに、真バーンとの闘いでは、アバンは実質的にはカイザーフェニックス一撃で「撃墜」されている。アバンほどの達人をもってしても、カイザーフェニックスをまともに食らうとほぼ一発KOの威力なのだ。カイザーフェニックスは、必殺技というほどの必殺ではないが、作中で今後もなんども使われる。格闘ゲームにたとえるなら、ゲージ必殺ではなく、普通の波動拳程度の扱いでばんばんでてくる。が、そのたびに威力が結構違っているような気がするのは、バーンの気分次第で威力が変わるということなのだろうか?今回、ヒュンケルたちに放っているのは、弱波動拳みたいな、弱いフェニックスなのかもしれない。

そういえば、このあとでバーンが指2本で、ヒュンケルのブラッディースクライドを軽く受け止めるのだが、実はこのシーンが一番最初のバーン戦では衝撃的かもしれないと思う。この状態の老バーンは、本来の肉体強度がない状態なのだ。にも関わらず、ヒュンケルの必殺技を指2本で受け止めてしまう。いくらなんでも強すぎないかこれ。しかもこのときのヒュンケルのブラッディースクライドは手を抜くとは思えない、本気の一発である。たとえていうなら、フェンブレンのツインソードピニングくらいの威力はあるんじゃないだろうか。それは当たればバランすら倒せそうな威力のはずなのだが。もちろん、バーンでも、不意を突かれて直撃すればそれなりのダメージになる可能性はある。これはのちに真バーンが、レオナにナイフで傷つけられたときに、「集中してないと強度は保てない」という話が出ることからも、そういう推測になる。したがって、この時の老バーンは、見た目とは裏腹に相当本気でブラッディースクライドを受け止めたのだろうか?
あるいは、ダイが竜闘気につつまれているのとおなじように、バーンも実は暗黒闘気でガッチガッチに固めているのだろうか。

そしてポップが起死回生を狙って放つメドローアを溜めなしのマホカンタで跳ね返すシーン。ここで一番面白かったのは、マホカンタが薄くて透明な「円」だったことである。原作ではバーンを正面からズームインした絵しかないので形がわからなかったが、まさか円だったとは!しかしこれ、円となると、呪文のタイプによっては跳ね返しにくそうな気はする。たとえばザラキみたいな空間に伝わってるような呪文や、マトリフお得意のベタンに関してはとても跳ね返せそうにない(それはシャハルの鏡も同じことかもしれないが)。あくまでメドローアが光の矢で直線状に飛ぶ呪文だから、この形で対応できたといえる。そのように考えると、メドローアが反射に弱く、味方と全滅させる危険があるというマトリフの話はまったくそのとおりで、ベタンなどのやや物理攻撃に近い性質を持つ呪文を開発していったのは妥当かもしれない(しかし現在連載中の「勇者アバンと獄炎の魔王」の時系列を見るには、ベタンのほうが先に生み出されたようだが)。

このあとで、メドローアを相殺したポップが、原作では「メドローア2発分の魔法力を使っちまった。もうメドローアは打てねぇ」というところが、アニメでは「魔法力消費」について言及しなかったように思った。これ、この言及があるかないかで、結構意味が変わってくる気はするのだ。アニメの表現を見るだけなら、魔法力が不足したから打てないわけではなく、いつでもマホカンタされる恐れがあるから打てない、という受け止め方のほうが自然に感じた。まあ結論から言えばどっちでも良いんだけど(笑)。

このあとバーン様の演説?シーンで、バーンが語る「鍛え上げた」というセリフが実は興味深い。バーンは生まれながらに最強だったわけではない、ということになるだろうか。バーンにも弱かった時代や、修行時代があったのだろうか。
ダイの大冒険と同時期に連載されていたジャンプ漫画、幽遊白書では、作中でトップクラスに入る戦闘力を持つ妖怪黄泉は、かつては妖狐蔵馬の部下であり、妖狐よりも弱かったことが言及されている。つまり、そこからの修行かなにかで強くなったということだ。
同じようなロジックが実はバーンにも働いていたりするのだろうか?それとも、ロン・ベルクのように、最初からめちゃくちゃ強かったのだろうか?(ロン・ベルクは生まれて10年程度で剣技を極めたと、自分で語っている)
仮にバーンが弱い魔族から強くなったのだとすると、完全にこれはスピンオフで見たいではないか。「バーン修行時代編」。

あわせて演説シーンで、バーンは「力こそ真理」と語るが、これは最後の真バーンと竜魔人ダイの闘いで、そっくりバーンがブーメランされる原理である。だが、この「力こそ」の話って、このあとでダイがどこまでバーンから聞いていたかのかというと、意外とそういう場面はなかった気もする。もしそうだとするなら、この倒れていたときに、ダイはこのバーン演説を聞いていて、覚えていたのだろうか。となると、このときダイは気絶していなかった、ということになる気がするが・・・。

さてバーンの口から神々の話と、太陽について語られる話。生物の源は太陽だといっている。ということは、バーンたち魔族や、ほかの竜族やモンスターたちも含めてみんな太陽が元でエネルギー(?)を得ているという解釈でいいのだろうか。
現実世界のエネルギーの流れは、基本的には植物や植物プランクトンが太陽エネルギーを光合成することででんぷんなどのさまざまな物質を合成し、それを食物連鎖のなかで摂取することで、あらゆる生物のエネルギーの流れが生み出されている。
それと同じようなことが、ダイの大冒険世界でもあるのだろうか?そうだとするならば、太陽を取り上げるというのはとんでもない話というか、虐待というか、取り上げられた種族はみんな死ぬしかないように思われる。神々がそれをやったとするなら、はっきりいえばそれは魔族竜族は死ねと、そう言っているに等しい。
しかし謎なのは、竜の騎士を生み出したのは「竜の神、魔の神、人の神」ということになっている。つまり、各種族の代弁者なのか、生み出した元なのか、信仰対象なのかはわからないが、神はいるのだ。仮に太陽のあたらぬ魔界に竜や魔族を押し込めるという決定をするなら、竜の神と魔の神はなにをやっているんだということにならないだろうか。いわば、自分たちの住んでいる県や州を代表する議員が、国会で何も仕事をしておらず、自分たちの利益実現や不利益回避を何もしてくれてない、そういう感じになるのではないだろうか。
このあたりは、原作でも詳細に語られることはないので、構造はまったくもって謎である。
が、バーンの言っていることがすべて正しいのかどうかというのもまた、実は審議すべきポイントかもしれない。なんせ、部下に黙って黒の核晶を埋め込むような男なのだ。

イオラ連発するバーン。このシーンは、漫画よりもはるかにたくさんのイオラがでていて、ちょっと笑ってしまった。もはや手の先ではなく、空間からイオラのボールが出現しているような気がする。これ、どうやってバーンはイオラを出しているんだろうか。というか、こんなことができるなら、のちにダイがアバンストラッシュXで真バーンの腕を切り飛ばすが、そんなことには大して意味がないということにはならないだろうか。謎である。

あとは、ダイのストラッシュを食らったバーンが、完全に死んだように見えるレベルで灰になっていた。いやもうこれ、完全に干からびて?死んでませんか。ミイラなのかゾンビなのかと(笑)。映画にかけていうならこれ、バーンオブザデッドですよええ。見ていてここは思わず吹き出してしまった。いや、いいんだけどね!

というわけで、今週は漫画とアニメの変化を比べてみると特にいろいろ面白い発見のある週だった。
次回予告で意外な救世主が誰か?とはなっているが、親衛騎団がすでに映っているのはいいのか!?


【Podcast】 Cast a Radio 「ダイの大冒険」を語る