ダイの大冒険(2020)第47話が放送された。特訓から戻ったダイたちの出発と、裏側でおきているキルバーンによるバラン暗殺(失敗)、そしてサババ造船所へのハドラー親衛騎団急襲までが描かれた。
冒頭、特訓から戻るパーティメンバーたちのシーンが、みなかっこよい。ガルーダから飛び降りるクロコダイン、武道家として超絶的動きを見せるマァム。そしてヒュンケルと語るロン・ベルク。このあたりはアニメとしての表現の幅が生かされていて、このシーンを見られたのはよかったと思う。
この出発前の音楽が、なんだかこれから最終決戦に向かう感じがすごくする。だが、原作読者は知るとおり、このあとで最初のバーン戦を迎え、ダイたちは完敗する。そう思うと、むしろこのシーンを初見で見ている子どもたちは何を思うのか気になるところである(笑)。
キルバーンによるバラン暗殺。ここはほぼセリフまわしは原作どおりであった。このシーンにおける謎は、なぜキルバーンが、バーンの意図をすべて話してしまったのか、ということである。キルバーンとバランの実力から考えて、暗殺が成功する確率がどこまであると、キルバーン、そしてバーンは思っていたのだろうか?ふつうに考えれば、バランのほうがはるかに戦闘力はうえなので、よほどスキをつくか、あるいはキルバーン得意な卑劣戦法でも取らない限り暗殺は不可能と考えるべきだろう。しかしキルバーンは、死神の笛は使うものの、ノコノコとバランに迫っていく。これで暗殺できると考えるほうがおかしい。
この流れはどのように解釈するのがよいのだろうか?バーンはキルバーンに暗殺を頼んだ。しかし、その方法については、キルバーンが本当に得意とする罠戦法による暗殺を期待していたのではないだろうか。たしかにそれならば暗殺できる可能性はある。が、実際にはキルバーンは笛以外はほぼ無策の暗殺を行おうとして、結果的には見事な返り討ち。さらには、バーンの地上消滅作戦の秘密までペラペラとしゃべってしまった。これにより、バランからダイにこの作戦概要が伝わり、人間たちもそれを知ることとなった。それが最終的には、地上消滅作戦の阻止につながったと見るべきであろう。すなわちバーンにとっては、キルバーンの「失態」が自らの作戦失敗につながったといえる。だがキルバーンの側、すなわち冥竜王ヴェルザー側からすれば、これは成功といえる。なぜならヴェルザーは地上を欲しかったからだ。
ここから考えるに、キルバーンがバランに対してバーンの作戦意図をバラしたのは、ある意味ではヴェルザーの差し金だと判断するのが妥当ではないだろうか。のちに真バーンとダイの戦いのときに、バーンはヴェルザーに対して勝利宣言をするが、実際にはヴェルザーは裏ではバーンにバレないように、その阻止を画策し続けていたと言える。そして結果的にはバーンはダイに倒され、キルバーンの自爆がダイを道連れにできたために、ある意味ではヴェルザーはかなり見事にやりたいことをやってのけたことになる。この過程で、自らが封印されることにつながった竜の騎士、バランの命を奪うことに成功したことも忘れてはいけない。
そこから考えると今回のキルバーン対バランの戦いでほぼ無策でのこのことキルバーンが向かい、バーンの作戦概要をバラしたのは、バーンも予想してなかったヴェルザーの策と言えるのではないだろうか。実際、人形であるキルバーンは胴体をぶったぎられても、ピロロの粉ですぐ復活できるわけなので、ほとんど問題はなかったわけである。むしろ暗殺に成功してしまってはダメなのだ。バーンとバランが激突するように仕向けることが、ヴェルザーの策の一部だったと想像されるからだ。
ということで長くなったけど、この時点では名前もまだでてこない(笑)ヴェルザー様さすがですね、と。
話が長くなったのでそろそろ終わりにしよう。親衛騎団がサババ急襲ののち、生意気マックスの北の勇者ノヴァさんがついに登場した。次回予告で、すでにヒムに敗北することがほぼ語られているノヴァ。どんまい。しかしこのノヴァというキャラの描き方が見事なのは、この親衛騎団戦で捨て駒にはせず、ダイとの修業によって自らの実力を知り、そこで一皮向けること。さらに超魔ゾンビとの戦いで、勇者とは何かということを自ら気づいていく。短期間に内面が成長したキャラという意味では、作中でトップの成長を遂げたといえるのがこのノヴァというキャラクターである。ポップがのちに語る「閃光のように」という言葉には、短期間における成長のすごさというニュアンスが多分に含まれていると思われるが、その体現者のひとりがノヴァなのだ。
というわけで、次回ノヴァさんが盛大にやられるのを見逃すな!
【Podcast】 Cast a Radio 「ダイの大冒険」を語る