ダイの大冒険(2020)第89話が放送された。タイトル「凍れる時間の秘法」。ビーストくんというか老師がかつてアバンがハドラーに凍れる時間の秘法をかけた闘いのことを回想するところと、そのあとでポップがミストバーンにメドローアを放つも弾き返されてポップと老師が消えてしまうところまでが描かれた。

冒頭ヒムが「あの男回復要員じゃなかったのか」と老師を評するところはアニオリだった。なるほどたしかに老師に回復呪文をかけてもらい、そして今まで戦闘に出てこなかったというところから回復要員と判断してしまうのも無理はない。これはある意味では読者というか初見視聴者の心理の代弁でもあるのかもしれない。アニメのここまでで、一度も老師は闘っていないのだ。

そしてはじまるミストバーン対老師戦。ミストバーンの攻撃の風切り音がすごい。どれだけの速さと強度をもっているかということの演出だと思うが余裕で全てかわしきる老師のすごさが際立つ。蹴りを顔面に叩き込むところでは原作と角度が違っていた。

ポップがヒュンケルに促されて「おれのメドローアで…」と言いながら間違えて両方ヒャドを出してしまうところは、その不安の内言化がアニオリとして入れられていた。これまでポップを演じ続けてきた豊永さんらしさ、ポップの焦りや緊張が特にうまく表現されているように感じた。からの鼻水。ひょっとしてここってポップの最後の盛大鼻水だったりするのかな?

そしてポップとマァムの会話シーンなんだが、後ろで聞こえる老師とミストバーンの格闘音がおもしろい。なんかもう飛び道具もなくて、急に格闘マンガ化している(笑)。

老師の回想語りから過去を描くシーンが始まる。このあと語るが、今日その日にハドラーを封じに行くというわりには、のんびりお店で食事をしてお茶を飲んでいる絵が面白い。この世界の人々は魔王侵攻を受けても店舗を営業しているらしい。これはゲームのドラクエのオマージュなのだろうか。皆さん強い。

「たとえ平和を勝ち取っても」とアバンが言うところで、親子が食事を買っているシーンか入るアニオリがよかった。これもまさに「平和を味わう者」としての市井の民の姿があり、アバンはそれを見ているのだと。

このあとの会話シーン、ダイ好きTV#80 で種崎さんも言っていたが、たしかにどうやってアバンはレイラが妊娠していることを見抜いたのだろうか。なんかそういう呪文でもあるのか?このあたりはもう謎すぎてツッコミようもないが。
からの手刀である。アニメや漫画でよく出る手刀シーンだが、なぜそれで気絶させられるのかは謎とされている。手刀をいくら頸部にうまくヒットさせても人間は気絶しないと思うのだが・・・。ただあれか、ここもなんらか魔法力でも使っているんだろうか。破邪力とか。いやロカは邪じゃないて!

そして、ロカの気絶のあとでマトリフが現れるわけだが、ここでマトリフのいう「おれには泣く家族もねえ」ってところ。これ、原作だけを読んでいた頃は、特にまあ「マトリフは独り者だしな」くらいにしか思っていなかったが、勇者アバンと獄炎の魔王を読んで、ギュータにおけるカノンとの別れがあったあとだと思うと、意味が全然変わってくる。このあたり、完全に獄炎の魔王のスピンオフとしての傑作ぶりがアニメに効いてくるという見事すぎるコンポである。「女を泣かさない主義」というのも、ある意味ではカノンを泣かせたことの反省だとも言える。

アイキャッチ。まさかの猛虎破砕拳。

そしてアバンと老人2人の荒野決戦となるわけだが、ここで「高名老人」という話が出るが、たしかにアバンもそうだがこの2人の強さも人間としては異常である。それだけのツワモノなのに、少なくとも獄炎の魔王にあるとおりでハドラーは認識しているのだとは思われるが、このときおそらくこっそり地上の様子を見ていたであろう大魔王バーンはなぜ彼らのことを知らない(少なくともバーンやミストバーンが二人のことを事前から認識していた様子はない)のか。うーん、リサーチ不足すぎないか。一人はなんでも消滅させる最強呪文の開発者兼使い手であり、ほかにも超魔法の数々を使える大魔道士であり、もう一人は真ミストバーンすら格闘で上回る超達人である。このあたり、バーンがやはり人間をなめている、それでもまあアバンは例外的にケアしていたということなのだろうか。

ところでこの荒野決戦はどういう約束でここで闘っているのだろうか。ふつう魔王は自分の城に控えているものだ。実際、のちのアバンとハドラーの決戦は魔王の城でおこなわれている。この荒野決戦はなんらかお互いの約束のものとでここに軍勢を率いてやってきたということになるだろう。その前段階の交渉はどういう流れだったのか。これは獄炎の魔王で描かれる可能性があると思うので期待したい。

凍れる時間の魔法がかかり始めると、モンスターたちが逃げ出してしまう。えー、自分の主君がやられそうなのに真っ先に逃げてしまうのか!もちろんマトリフと老師はそこから逃げることはなく様子を見て、最後2人だけが残っているわけだが。このあたり、旧魔王軍のモンスターは、きわめて動物的というか、忠誠心はなく単に強いものに従っていただけなのかもしれない。

そういえば、かつて凍れる時間の秘法がかかっている状態でマトリフがメドローアをハドラーのほうだけに撃ち込んだら何が起こるんだろうか。それでアバンを戻せたらめでたしということになりそうなものだが、術がかかった人たちをうかつに一人でも消してしまうと復活できないみたいな制約があるんだろうか。

そして長い長いおしゃべりに飽きてしまった(違う)ミストバーンがついに老師に攻撃を再開するところで、老師の目がカッと光る。これは原作だと一瞬だったが、アニメだとかなりはっきり光っている。そして音楽が変わり、ミストバーンをぶちのめす右拳が入り、からの超連撃である。これ、原作で読んでいてもやべーな老師というところだが、アニメで見るとより圧倒的な手数感である。だいたい、ミストを殴り続けたまま、老師は地面から浮いているではないか。これはどういうことなのか。考えられるのは、蹴りなのかパンチなのかでミストバーンの身体を押す反力によって、常に浮き続けているということなんだろうか。
全然別作品だけど、格闘マンガ グラップラー刃牙に出てくる天内悠という格闘家が空中からの連続攻撃という技を繰り出していた、あんな感じなのかもしれない。あとは同じく続編のバキに出てくる死刑囚スペックの無呼吸連撃っぽさもちょっとある。
なお、その後もやはり老師は常に空中にいたままパンチを打ち続ける。これこそじつは武神流の大技なのでは。武神流奥義無限空中拳。
そういえば武神流は全部奥義って拳技なのかな。蹴り、投げ、締め、関節技はないの?

そして土竜昇破拳!が不発して、ミストバーンにとっ捕まる老師。「ハドラーと闘ったときよりさらに短いよ」のあとでミストバーンが老師を盾にしようとするときに「あっ」という原作にはなかった老師の悲鳴?が入る。なんかここがちょっとよい。
しかしこれ、ミストバーンは老師の服の布を掴んでいるだけだと思うんだけど、老師はだったら自分で抜け出すことはできなかったんだろうか。老師も、ポップが自分を巻き込んでメドローアを撃てる人間ではないということはよくわかっていそうなのだが。それほど疲れ切ったのか。たしかに、「ぜえぜえ」という疲れた息遣いがアニメだとより伝わる。
しかし老師の凄さはなんといっても、ミストバーンによる攻撃のダメージでやられたわけではなくて、たんに自分が疲れてしまったためということだろう。

ポップがメドローアを放ってクラウチングルーラ(これはダイの大冒険89話演出担当 ヒロスエさんの言 より )でそれを抜き去るところのあと。原作読者の多くが気づいたであろうが、原作であったポップがミストの顔をキックして体勢を崩す描写は入っていなかった。また、マァムの内言もなくなっている。ここについてはたしかにカットでもよかったのかもしれない。実際ミストバーンは老師のあれだけの攻撃でようやく体勢を崩すくらいの身体なわけで、ポップの蹴りくらいで体勢が崩れると考えるほうがちょっと無理があるのかもしれない。
→追記ですが、アニメを見返したら一応ポップはさらっとミストバーンの顔を蹴っていました。

そしてフェニックスウィング。大事なシーンなので3回描きました。
どうでもいいけど、これ老師とポップの方角じゃなくてクロコダインやマァムのいるほうに弾いたら、アバンは助けきれなかったのではないか・・・?まあそこは、メドローアの使い手であるポップを危険視して消すということをアバンは読んでいたということか。そのあたりは次週。

これ、次回予告の構成が、アバンが化けたキルバーンと、ミストバーンの会話がこじれているように見えるところからの最後バーニングクリメイションなので、ここだけ見た初見視聴者は、キルとミストが紛糾してキルがミストに必殺技を打ち込もうとしてるように見えないだろうか(笑)。


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