ダイの大冒険(2020)第86話「キルバーンの罠」が放送された。バーンからの誘いをダイが断り、異空間のアバンとキルの対決が終わり、ヒムがミストバーンを圧倒していくところが描かれた。

冒頭、レオナがバーンパレスから落ちそうになり、パプニカのナイフを壁に突き刺してぶら下がるというシーンが描かれる。これは漫画からあるシーンだが、よく考えるとこの耐え方はすごい。オロナミンCのファイトいっぱつのCMでもここまでではないような。もうちょっとレオナの判断が遅かったらレオナは落下していたのではないだろうか。ダイはもうちょっと焦ってもいいような(笑)。しかしレオナって賢者なのにルーラはできないのだろうか?ルーラができればこの場面もとくにピンチではなかったような。いかに飛べることが重要かよくわかる。

さて、バーンがダイを口説く前に「バランが竜魔人と化しても余とやりあえない」と述べるが、これはダウトであることは明らかである。なぜなら、ダイを守るために怒った竜魔人バランは超魔ハドラーを肉弾戦で圧倒したが、その超魔ハドラーに対して、最初にダイと剣を交えたときの老バーンは魔力が低下したときに相当追い込まれたシーンが描かれているからだ。すなわち、肉弾戦だけを取るなら、竜魔人バランを間違いなく老バーンを圧倒できるポテンシャルを持っている。
老バーンは、このハドラー戦の不覚を忘れているのだろうか?都合の悪いことを忘れてしまうのがえらい人なのだろうか(笑)。なので、このときのバーンのセリフは、ダイを口説くための都合のよい弁舌だという解釈ができるわけだが、もう一個解釈ができて、それがすなわち老バーンではなくてミストから身体を戻した真バーンであるなら竜魔人バランに勝てる。これはたしかに間違いないだろう。そういう意味だと考えるなら、このバーンのセリフはあながち嘘やハッタリではない。さて、真意はどうだったのだろうか。
→こちら収録時に判明しましたが、「バランが竜魔人と化してもやりあえる相手ではない」はアニメではカットされておりました。私が漫画を読んで思い込みで書いてしまいました。失礼いたしました。

そしてバーンがダイを口説くシーン。通称すしざんまいのポーズである。ここでのバーンとダイのやりとりは作中屈指の会話だと思うのだが、今回アニメでも見事に描かれていた。バーンの目線からダイの目線に移しながら、ベンガーナで「怖い」のシーンを回想で差し挟む。そしてダイの目とバーンの目を描かずにバーンの口説き文句を語らせる。そして、レオナの「そんなことはしない」という言葉に対してもそちらを向かずに訥々とレオナの個人的好意という真実を射抜く発言で返していく。
なお、このときのバーンのセリフが原作では「公事にたずさわる」だったのが「王家のそなた」になっていた。コウジって言葉は聞くだけではわかりにくいものね。
そしてそのあとの「どうするダイ」のところでは、画面を中心にしてカメラを円を描くように回転させるという面白い描き方がされていた。ダイが自分自身の内面で問を受けて頭がぐるぐるしてしまう感じが表現されているのかもしれない。

からの「どうするダイ」のところ、原作を読んでいた印象だと、このバーンの語り口は冷静さが支配的なのかと思っていたが、実際アニメ化されると、結構語気の強いご老人のセリフになっていた。そのあとも、バーンが結構いらいらしたような話し方をしている印象だ。アニメにおいては、やはり老バーンであっても感情豊かな描き方をしているように思う。
だが、そんなイライラしていたら、戦う相手を部下にしようなどという交渉が成立するとは思えないのだが。やっぱりバーン様、あんまり交渉事が得意じゃないのではないか。
ダイ好きTVで関智一さんも言っていたが、「相手のほうが有利になってから部下になることを持ちかける」のは遅い、というのはまったくそのとおりである。
ここは機動警察パトレイバーに出てくる悪役内海課長のセリフからバーン様はしっかり学んだほうがいいのではないか。「頭は優位に立ったときこそ下げるもんだ!」と。いやほんと、そうなのよ。バーンがバランを口説くことができたのは交渉術ではなく、ただタイミングが良かっただけではないだろうか。
まあもちろん、このときのダイにそもそも交渉の余地があったとは思いにくいが、しかしダイの胸中の葛藤を見るに、なんらか運び方はないわけではなかったような気もする。

からの「地上を去る」。人間たちの顔を思い浮かべながら、太陽の光とともに言い切るこのシーン。音楽も相まって、ダイの悲愴であり吹っ切った覚悟が伝わる描き方が見事だった。

そしてこのあとでピロロがこの闘いを覗いているシーンが映るのだが、正直にいおう。原作のこのシーン、私はてっきりピロロがバーンとダイの闘いを覗いているわけじゃなくて、異空間でキルバーン人形のバトルをウォッチしているのかなと思っていた。いや冷静に考えるとそんなわけはないのだが、この激しいバトルの場に戦闘力の低いピロロがしれっと居続けるのもどうなんだろうとか思ったりしていたら、あまりそれ以上ふかく考えていなかった。しかし今回アニメできっちりとバーン戦を覗いていたことが描かれたので自分のなかで納得した。

場面はアバンとキルバーンの闘いに移る。原作からそうだったのだがアバンがいう「同じレベルの早さ」というところが興味深い。ダイの大冒険において、速度の概念はそこまで重視されていないような気がしてる。というよりも、速度をウリにしているキャラ(ラーハルトやアルビナス)が、速度じゃないポイントで勝負してくる相手に敗れてしまうことが多くて、あまり速度が重要という印象がないというほうが正しいのかもしれないが。

ファントムレイザーでアバンの剣が折れたシーン。しかし、よく考えると剣と刃が当たっただけで剣が折れてしまうってどうなんだろうか。アバンの剣、いかんせんもろくない?

して、仕掛けられたファントムレイザーのなかを逃げ回るアバンが全身に切り傷を受けてしまうところだが、それほど鋭い刃にしては、アバンの受けた傷が浅いのがまた気になる。アバンを驚くべき俊敏さで、体が切れたと思った瞬間にそれ以上深手を追わないように体勢を変えているんだろうか。

ジャッジに掴まれてアバンがキルバーンの足首を掴むところだが、もともと気になっていたが、キルバーンの武器はレイピアなので、突きはともかく斬撃ができるのだろうか。いまいちやはり武器の扱い方が下手なのがキルバーンだという感じがある。
そして現実空間に戻ってきたキルバーンが、バーンとダイの闘いの状況を認識するシーンがアニメオリジナルで追加されていた。ここはまさにピロロが闘いを見ているからこそ可能なわけだが、やはりこれで、ピロロがキルバーンを腹話術で操作していたという設定はちょっと苦しくないか、という気がしてくる。いやわかってる、わかってるんだけど、ここまでキルバーンを生き生きと描くと(これはもちろんアニメに対する褒め言葉である)やっぱこれ人形でした、ってのはなかなか受け入れがたい(笑)。

そして、ヒムvsミストバーンが描かれる。面白いのが、チウの振る舞いである。ミストバーンを攻撃するヒムに対して、特に驚くこともなく、スタスタと「拾い物だ」と言い、そしてそのチウの言葉に反応するヒムがミストバーンをぶん殴りながら対応しているのが面白い。いや原作もよく読むとそうなっているのだが、アニメで見るとなおそこが印象的だった。

最後、ダイがバーンの攻撃を受け止めて跳ね返しながら壁に叩きつけるシーンが描かれるが、ここでバーンが手から出している黄色い光線はなんなんだろうか。暗黒闘気?呪文?いまいちよくわからないが、今回の闘いは魔力開放ゴールデンバーンなので、やはり呪文?しかし呪文だとするならドラゴニックオーラを噴出しているダイにはほとんど効かないような気もするのだが…。


【Podcast】 Cast a Radio 「ダイの大冒険」を語る