ダイの大冒険(2020)第61話が放送された。今回は原作のなかで挿入された外伝的エピソード「勇者アバン」のアニメ化回として、16年前、アバンがはじめてハドラーと対決し、そのあとでハドラー打倒の旅に出るところまで描かれた。
今回はアニメのはじまりの音楽が通常回と異なっていた。そこからして、今回のエピソードのスペシャル感が感じられてわくわくする。
そしてまた、今回ナレーターが櫻井孝宏さん、すなわちアバン役であることを久々に思い出した。アバンの声でアバン自らの旅立ちのイントロを話すというのはなかなか趣向がこらされている。
城のキッチンで女の子たちに料理指南をするアバン。これは原作どおりであるが、セリフが「味付けがノーグッド」というかんじで、古い話だがこれはいわゆるルー大柴的な、ルー語を彷彿とさせた（笑）。アバンはルーだったのか。
そして、味付けの秘訣として「すばやさのたね」を入れることを教えるアバン。え！すばやさのたねって料理に入れちゃっていいの？てか美味しいの？このあたりのアレンジは興味深い。ちなみに原作ではパデキアの茎をすりつぶして入れる、となっていた。いまの視聴者世代にとってはパデキアといってもなかなかパッと通じないので、これはアレンジが加わったのかもしれない。
そのあとでロカとアバンが会話するシーン。ここのアバンのセリフが、90年代前半と2020年代前半の社会背景の変化を特に感じるところだった。これまでにもちょいちょいと感じてきたところではあるが。原作では「あなただっていつかは結婚して奥さんのお世話になるんですから」であったが今回アニメでは「料理の１つも」ということで、ロカも結婚したら料理をするのが当たり前でしょ、というようなテイストになっていた。まさにこれは、日本社会の「男性が労働し女性が専業主婦をする」結婚のモデルが、「共働き、共に家事をする」形に社会の前提が変わったことが表現されていた。
しかし実際、ダイの大冒険世界だと人間たちの結婚、家庭においての労働分担はどんなもんだろうか。まあそもそもそんなこと考える前に、バーンによって人間滅亡、地上消滅というあまりに大きな問題があるので、作中時間のなかではそんなこと言ってる場合じゃなさそうだが（笑）。
さて、ハドラーが鏡文字通信で襲撃予告をしてやってくるシーン。ここで、ドラゴンに乗って現れ、フローラ姫を攫おうと言う構図は、これはダイ好きTVでも言及のあったとおり、ドラゴンクエスト1の設定のオマージュなんだということをアニメで見ると改めて感じられた。ハドラーが竜王役、フローラ姫がローラ姫役（名前の類似性はここからきているそうだ）、そしてドラゴンクエストという作品の主題である「ドラゴン」の存在。
現代の小学生は多分ドラクエ1をプレイしている子はほとんどいなさそうだが、なんらかのきっかけでプレイすることがあれば、これが原点であり、ダイの大冒険世界の設定の原型でもあるんだということが感じられたりしたらいいなぁと思ったりする。
ドラゴンに対してアバンが毒牙の粉をかけるシーン。原作では粉を袋でかけていたが、今回アニメではなんと魔弾銃のプロトタイプから発射していた！これはなかなか攻めた演出のアレンジで、とても面白く思った。このときからすでにアバンは魔弾銃を開発していたということか。齢15歳にして、天才としかいえない。
しかし、なぜ魔法を詰める銃なのに、このときは毒牙の粉を発射しているだろうか（笑）。それとも適当なものを発射する銃として作って、のちに聖石をとりつけた弾を使うことを思いついたのだろうか。
このあとフローラの回想で、マンイーターを倒してくれたアバンの姿が出てくるが、よく考えると15歳のアバンの3年前なので、12歳である。現代で言うと小学校6年生だ。そして、原作のダイと同じ年齢である。アバンもなかなか若年労働をしているな…。
さてロカがハドラーの腕を切り落としてイオナズンを妨害したわけだが、ふと思い出すのは左手を切り落とすというと、ダイがのちにストラッシュXでバーンの左腕を切り落としたシーンである。
このバーンの左腕を切り落とすまでにどれほどのレベルアッと犠牲を払ったか、と考えると、16年前のハドラーの腕を切るだけなら、不意をついたロカの一撃で十分だったということと比較すると、戦いのレベルがこの16年で超インフレしてしまったことを想起する。
そういえば切り落とされたハドラーの腕にくっついているドクロの指輪がカクカクとしゃべってる仕組み、あれはどういうことなんだろうか。切り落とされた部位を通じて通信ができるというのは、実はのちにどんな敵もやっていないすごい魔力（？）のような気がするが。
最後、アバンがフローラとアイテム交換をするところ。これがここに描かれるのは先週予想したとおりだった。
ロカとアバンの旅立ちのところで、セリフが新しく変更、追加されていたのが面白かった。「攻撃が最大の防御」というのはロカの考え方を表しているのかなと思う。
ということで次回は破邪の洞窟に挑む「クエスト」。
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