ダイの大冒険(2020)第60話が放送された。ダイの逃亡からの、ポップが迎えに行き、再び立ち上がるところと、そしてフローラの「昔語り」の始まりまでが描かれた。

今回はなんといっても、大胆なストーリーの編集に着目すべきではないだろうか。
勇者アバンと、かつての魔王ハドラーとの闘いの様子が、フローラから語られる、というシーンでエピソードが終わるのだ。
今回一番びっくりしたのは次回予告であった(笑)。

たしかに、原作で挿入話として描かれた16年前の闘い(アバンとハドラーの初対決)がいままで描かれないままアニメでは進んできたのだが、このタイミングでフローラの口から語るというスタイルで描かれるとは全く予想できなかった。
考えてみると、アニメは順番で物語が進んでいくので、漫画のように「サイドエピソード」をさらっと差し込むのは難しい。ということで私自身はあの闘いは描かれることなく最終話まで行くのかなと思っていたのだが、やはり重要なシーンということでここで次回の1話を使って描くことにしたというのは大変興味深い。
まさに、漫画が完結しているからこそできる「あらたなる構成」として、これはとてもいい試みだと思った。
合わせて、今Vジャンプ上では「勇者アバンと獄炎の魔王」がちょうど連載されていて、いい具合に盛り上がってきているということもまた、タイミングとしてはちょうどいい。
そして原作読者は皆知っている通り、このあとのバーンパレスでのダイVSハドラーのあとでアバンは「復活」するわけなので、そういう意味でもこのこのタイミングはちょうどいいといえるだろう。

また編集という観点では、今回のエピソード内で見ても、結構ダイナミックに編集がされていた。原作では、フローラが作戦説明を始めるところで、ポップがいきなり「ちょっと待った!」と口を挟むところがあるが、アニメではそのような順番をとらず、フローラがさらっとミナカトールの話を進めていく。ミナカトールの話が出て、5人の使徒が必要だという話が出てから、ポップがカットインをすることになる。
なお、小さなところではあるが、アバンのしるしの話が出たときに、マァムの「いつも首の皮一枚の勝利だった」というセリフはカットされていた(笑)。
また、ミナカトール習得プロセスの説明も、原作に比べてあっさりと整理されていた。
そして、レオナが「自分はアバンの使徒の資格をもっているのか?」とフローラに問うところから、次回につながっていく。ここから過去話が描かれるわけである。

原作ではすでに語られた箇所に含まれていたカールのまもりに関するフローラの説明も今回は省かれていた。とはいえ、カールのまもりはアバン復活のための超重要アイテムである。おそらくは次のエピソードの中で、それを手渡したシーンが描かれることだろう。

あとは順番が前後するが、ダイが逃亡してテランに行ったときに、原作だと篝火を焚くために走る少年がすっ転ぶところを助けるシーンがあったが、今回アニメでは遠くからチラ見しているだけになっていた。これは単に時間バランスを調整するための選択なのかな?という気はする。

私はこのダイログを書き始めた1年前、アニメ版を「短縮」だと評していた。ただ、そうは思っても、それを新しい描かれ方として楽しみたいと思ったことも事実である。
だがアニメ放映開始から1年以上がすぎ、制作陣の熱い想いとクオリティの高さに触れ続けた結果、今回の新構成、編集に、すごく納得感を覚えている。


【Podcast】 Cast a Radio 「ダイの大冒険」を語る