ダイの大冒険(2020)第40話が放送された。ミストバーンが鬼岩城を操ってポップやマァムたちと戦うところから、ヒュンケル登場、そしてヒュンケルとミストバーンのバトルが途中まで描かれた。

今回冒頭で、ポップとマァムが鬼岩城を食い止めにいくシーンで、チウが置いてきぼりになるのだが、その彼がレオナたちにカッコつけるシーンがなぜかきっちりと描かれていた。ミストバーンの言動を聞いたポップが、もはや逃げだすことなく、むしろ怒りを顕に飛び出していくシリアスなシーン。ある意味でポップの変化を描いているが、このあとに挟まれるチウの1コマはそのシリアスさを和らげる。これは原作かそうだったのだが、アニメで改めて描かれると結構印象に残るものだ。

余談だが。
「漫画のアニメ化」に関してのアニメと漫画の差異(ダイの大冒険が、というのではなく一般比較として)は多々あるだろうし、たぶんそれに関する論考もあるだろうから特にここで深くは述べないが、いままで40話にわたってダイの大冒険のアニメを見て、原作との比較を続けてきた結果として、私自身としてはこれまで人生で全く入るのなかった深さまで、「漫画のアニメ化」を考える機会となった。
そのなかでひとつ感じている大きな差異は「シーンの省略あるいは記号表現を使うことで、読者想像で補うことができるのが漫画。視聴者の想像に任せることができないのがアニメ。」ということだ。
たとえば今回のチウがかっこつけるシーンは、原作ではレオナたちのリアクションは明確には描かれず、なんと建物の外観から、「・・・」という沈黙記号の吹き出し(+汗)で表現されている。ここから私は「ああ、チウがデカイこと言っちゃって、でも実際には彼は現場に行けてもいないわけで、その滑った空気に対してレオナがどうしたもんかなー、という顔をしている」という想像をするわけである。
だが今回のアニメでは、そこはレオナが顔を出し、身体を動かし、セリフをつけた明確なリアクションをとっている。それは、上述のとおり省略と記号による想像が成立しないから、動かざるを得ないのである。

これはどちらが良い悪いというもので全くない。漫画の表現手法をそのままアニメに当てはめることはできないため、アニメとして演出し直すとこうなったという話である。ここに関して、そもそもまずアニメ化に際しては「描く、描かない」の選択肢があったことにも着目したい。第38話では、それこそかなりの原作シーンを「短縮」した。これは明確である。それがどういう基準というか、全体的な演出の観点で決められたのか、それは私には知る由もないが、ポッドキャストで述べたように「え、そこ切っちゃうの?」と思った箇所がいくつかあったことは否めない。
かように考えたときに、このチウとレオナたちのシーンに戻すと「なぜここは表現することにして、明示的な表現したのか」というところを考えてみるとまた面白いものだったりする。

って、最初のシーンだけで随分書いちゃったな。ここから先はサクサクと(笑)。

ミストバーンが差し向けた魔影軍団の中に、剣の形のモンスターがいた。私は知らなかったのだが、これはひとくいサーベルというらしい。
と思ったら、調べたところではドラクエ4や、ドラクエモンスターズに出てくるそうだ。少なくとも私はドラクエモンスターズのほうはクリアしたはずなのに…。しかしもはや20年くらい前のことなので忘れてもそれは仕方ないということにしておく。

そのあとでミストバーンが送り出すデッドアーマー3体。ミストバーンはこいつがいれば十分だと豪語するわけだが、ヒュンケルにあっという間に倒されてしまう。原作通りだが、よく考えるとミストバーンの相手の戦力分析が実に不正確なことに気づく。ひょっとしてミストバーンって相手の技量を測る能力が低いのではないだろうか。まあ本人はバーンから最強の身体を託されている以上、相手が多少強かろうが弱かろうが関係なく勝てるのだから戦力を見極める必要はないのかもしれないが。
のちにヒムがプロモーションしてからミストバーンと戦うときにも「ポーン風情が」とあざ笑ったものの、いいところなくボコボコにされ、バーンの肉体を使わざるを得なくなってしまった。これも結局相手の実力を見抜けないがゆえの結果ともいえる。
ミストバーンは暗黒闘気力と、他人の肉体を使う術を持っているが、当人の判断力も含めた戦闘力はさして高くはないのだろう。

このあとミストバーンは、ヒュンケルに対して「私の過去の汚点は…」と言っていたりもする。要するに、過去の恥や失敗に囚われる性格なのだ。恥や体面というものを重視する、わりとねちっこい思考の持ち主といえる。当初期は冷静沈着無言と思いきや、このあたりから徐々に感情的に熱しやすいタイプであることが明らかになっていく。肉体を持たない彼がなんでそんな熱しやすいのかはよくわからないが。「頭に血が上りやすい」という表現、ミストバーンの場合は頭も血もないのに。
意外と私自身が年をとってみると、ミストバーンの考え方や行動は「あー、こういう人いるよねぇ〜」という感じで興味深くある。

ということであまりアニメに触れなかった(笑)。


【Podcast】 Cast a Radio 「ダイの大冒険」を語る