ダイの大冒険(2020)第94話が放送された。タイトル「絆にかけて」。天地魔闘の構えを見切るために、ラーハルトとヒムが肉弾攻撃するも倒され、そのときにポップとダイが天地魔闘の構えのタイミングを見切ることに成功した。そしてポップが奥義の受け役として、天地魔闘の構えに飛び込んでシャハルの鏡で大魔王の天地魔闘の構えを破るところに成功するところまで描かれた。
ポップが天地魔闘の構えの本質を見抜いて説明するところ、原作では「攻・防・魔の3大超必殺技」という発言をしていたが、アニメでは「攻撃・防御・呪文」という言葉に変わっていた。これはたしかに音で聞くとそれぞれ熟語で話してくれたほうがわかりやすいので納得の変更である。
バーンがポップに「暗黒闘気で受けたダイの傷は回復呪文で治らん」というところ。改めて考えるとそうだ大魔王バーンの使っている闘気はすべて暗黒闘気なのだといまさら思い出した。カラミティエンドはとりわけ闘気をこめた手刀だが、それも当然暗黒闘気。ただそうなると、かつてミストバーンが闇の衣をとった状態で「暗黒闘気も前のときのほうがすごかったじゃねえか」というヒムの話があったがあれはどういうことなんだろうとは思う。バーンの肉体に入り込んだ状態のミストバーンは、外側を覆い尽くすほどの暗黒闘気(=ミストとしてのちから)はあまり発揮されていないということか。一方老バーンはもともと圧縮した暗黒闘気を放っていたわけなので、いまの真バーンの状態で使っている暗黒闘気というのは老バーンのときも含めて、ずっとバーンが「本体/ベース」のほうに持っていた暗黒闘気となるだろうか。となるとその暗黒闘気の量は老バーンのときよりも今は多いのか?強いのか?というのは気になるところだ。おそらくは暗黒闘気そのものが激増したというより、若い肉体の強度があるところに加えて暗黒闘気を載せた状態で放つ技が強い、と解釈するのがいいのかもしれない。
ポップの「おまえらの命おれにくれ!」のあとでバーンが放つ技が、黄色いオーラを帯びている。これはさていったいなんなのか。これまでの老バーンの戦闘から踏まえるに、これは呪文的な力なのか、暗黒闘気的な力なのか?呪文だとするなら、なにか特定の呪文ということになるのかもしれないが、バーンはなにか唱えるわけでもないし、描かれているエフェクト的にもあまり派手な呪文感はない。となると真ミストバーン状態で繰り出していた掌圧の派生系のようなものになるのか?ただそうなると、ここには暗黒闘気成分はあまり含まれていないということになるのだろうか?かつて老バーンがダイにぶつけた「超圧縮した暗黒闘気」ではどうもないように見える。それだったらもっとダイたちがもっと大ダメージを受けていてもおかしくなさそうなので。そしてそのあとでラーハルトに対して横薙ぎするような攻撃を放ち、これによってラーハルトは目を負傷する。原作では明確に描かれていなかったので、今回アニメで丁寧にここを描いてくれてよかったなと思った。ただ、これによってラーハルトはどの程度ダメージを受けてしまったのか気になる。最後、ダイの大冒険の最終回では、無事に旅に出たラーハルトの姿が見えるところからすると、かつてクロコダインがダイの一撃で目を失ったほどのダメージではないのだろうか?仮にそうだとすると、初期ダイの一撃の威力ってすさまじくないだろうか…(鋼のクロコダインの目を回復不能なダメージを与えるなんて…)。
さてバーンが左手から余裕のカラミティウォールを撃とうとするところで、原作でもアニメでも「いくつか削れ散る瞳」と言っているが、描かれている範囲ではどうやらウォールとダイたちの間に転がっている瞳はチウだけのように見える。バーンは数を数え間違えたのだろうか…。それともすでに気絶していてリアクションできなかった瞳もそこにあったのだろうか。
そして迫りくるカラミティウォール。バーンはかつてダイが同じような闘気を発生させることで無傷でしのいだことを忘れてしまったのだろうか。それとも、あれは結局ダイ一人分だけのスペースでいなしただけであって、ほかの味方までは守ることは不可能だとわかっている、ということなのだろうか。それか、いまのダイの負傷状態ではそもそもあのしのぎ方すらもうできない、ということかもしれない。たぶんそのあたりのあわせ技だとは思うが、それでいうとやはりカラミティエンドの威力が異常なほどだったと考えられるなぁと改めて思った。たしかに真バーンになってからダイは色々な攻撃を食らってしまってはいるが、直撃した必殺といえば、カラミティエンドとカイザーフェニックスの2つである。カイザーフェニックスのほうはドラゴニックオーラの減衰もある程度は効いたかもしれないし、まあそもそも老バーンのときも一発自ら飛び込んで受けに行ったわけだし、ほんとうの意味で致命傷というほどではないのだろう。となるとやはりカラミティエンドの威力が異常なのだ。
ここからのポップの立ち上がりとダイとの会話。ここは漫画だと実はそこまで個人的には記憶に残っているシーンのほうではなかったのだが、今回アニメで見ると、いやはやなんという、ダイの大冒険を極めて象徴するシーンなのだろう、と気付かされた。最初にデルムリン島から冒険の旅に出た、未完成勇者のダイと逃げ腰魔法使いのポップ。その二人が(わずか)80日あまりの「パーティとしての生」を過ごす中で、究極の信頼関係を築き上げていることを思わされるシーンであった。この「さすが相棒」というセリフには、たんなるパーティメンバーという関係を超えて、「見えているもの、やろうとしているものの一致」がすべてを語らずして深く共有されていることを感じさせるものだった。そして「一人じゃねぇ」というセリフには、いままで老バーン、真バーンに対して一人で戦わせてしまい、大ダメージをダイが受けてしまったことに対するポップの詫びというか、すまねえ、という気持ちもありつつ、「いまはもう死ぬまで一緒に戦う」という決意がこめられている。さらに「代わりに〜仲間がいる」「おれが受けてでも」というところには、ほかのパーティメンバーに対して適切な指示を出す、というか命を預かった上で依頼できる自信というか責任感がこもっているうえ、それを自分もやる、ということに迷いがない。
であるがゆえに続くヒムの「正気じゃねぇ」がほんとにそうだなと思うのだ。合理的なやり方ではどうやっても勝てない。勝てるとしたらそれこそ本当に「絆」なのだと。
ウォールに立ち向かうヒムに続いて立ち上がったラーハルトが「バーンはどっちだ」と言うあとで、漫画ではなかった「バーンならこっちだ、こい!」というヒムのセリフがアニオリで追加されていた。これもいい演出だと思った。わずか数時間?の即興仲間であるラーハルトとヒムの間にある目的達成のための信頼を感じられた。
このABパートのあいだのアイキャッチ、ヒムのオーラナックルと、ラーハルトのハーケンディストールだったのが、過去のアイキャッチのなかでも特にいいなぁと思った。
そしてヒムとラーハルトが撃墜されたところでメドローアが来るわけだが、そもそもヒムってオリハルコンボディなのにカイザーフェニックスでどのくらいのダメージを受けたのかが気になってしまった。もともとザボエラのマホプラウスは全然効かなかったと思うんだけど。それともカイザーフェニックスまでの威力になると、もうオリハルコンでもなんでもある程度は突破してしまう威力なんだろうか?材質じゃんけんという話ではないのかもしれない。
あとポップがここでメドローアを放ったのが、もしコンマ数秒早かったら、それでバーンを倒せてしまっていたのか?そこはちょっと気になる。それとも、そのタイミングで放つとラーハルトとヒムにあたってしまう可能性があったから、そこはポップはギリギリ狙って撃ったということかもしれない。
ポップがバーンを挑発したあと、原作で差し込まれていたナレーションのところでは、今回アバンのセリフという形で語られていた。いやー、これは上手いなと思った。もともとアバン役の櫻井さんがナレーションもやっていたわけだが、アニメのエピソードのなかでは基本的にはナレーションはこれまで入っていなかった。だがここではやはりこのナレーションはほしいな、というところで櫻井さんアバンのセリフとして入れたのは見事だった。
ここでポップがしかける最後の攻撃に対して、原作でもあったが、アニメでもちゃんと、この架空のシミュレーションのシーンを入れてくれた。カイザーフェニックスの鳴き声入で(笑)。
このあとのバーンにたいして、ポップとダイが決意というか想いというかを語るシーン。ここも、いやたしかに原作でももちろんいいシーンではあったものの、アニメでじっくり描かれると改めて、先程書いたシーンともつながるが、ダイとポップの冒険が思い出され、そして信頼が強く描かれて、グッと来るシーンである。あとここでポップが「魂の絆」というが、なるほどこれがスマホゲームのダイの大冒険「魂の絆」のネーミング元だったのだ…といまさら気づいた(ゲーム全然やってなかった…)。
絆というものは、バーンにとってはとことん下らないものだが、ダイやポップたちにとっては生きる根源にあるとも言えるものかもしれない。力 vs 絆の究極の邂逅がここにある。
これはかつてダイの父バランが「くだらぬと思って捨てた人の心に強く打ちのめされた」を長い時間をかけて受けた「下の句」のようなものではないかと思っている。ダイとポップは、絆で力に勝てることを再び、そしてここで心底に示してみせる。
このあと、ポップが隠し持っていた秘策は、シグマのたくしたシャハルの鏡ということになるわけだが、そこが特にこの絆の最大のポイントだというのが、改めてすごい物語のつながりだなと思う。いったいだれが、あのときシグマがシャハルの鏡をポップに渡していたなんてことを想像しただろうか。バーンのみならず読者/初見視聴者、全員度肝を抜かれたであろう。
ポップが跳ね返したイオナズン級の呪文とフェニックスの融合体、なぜかフェニックスの鳴き声が入っていた。あれは本当に鳴き声だったのか、そのように音が響いただけなのかはたまたバーンの空想なのか。そんなことを考えるのも面白い。
あとそうだ、21分37秒でのバーンの笑い顔の歪みっぷりがなんか面白かった。
さて、これで次週、炸裂ストラッシュX!!!からの…。
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