ダイの大冒険(2020)第50話が放送された。ついに第50話である。今回は引き上げた親衛騎団農地で、フェンブレンのみが派遣され、チウをいたぶるもバランに撃退されるまでが描かれた。

メドローアをブロックの捨て身の押しつぶしで回避した親衛騎団たちのなかで、シグマがシャハルの鏡を手に、「死んでも砕けん」というところ。よく考えるとこれはのちに最高のフラグともいえる。そのシャハルの鏡を持ったシグマをポップがメドローアで倒すというのちに、それがポップに受け渡され、真バーンの天地魔闘の構えを破る切り札として使われる。まさに死んでも砕けんどころか、ダイたちの大いなる味方になったわけである。ハドラーの死の間際の思いを受け取ったヒムは後にダイに加勢するが、シグマも実はそれに近い働きをしたといえる。

ハドラーな魔力ビジョンに対してブーメラン状の鎧パーツを投げるヒュンケル。よく考えると、ヒュンケルが魔槍に精通した証と言えるだろう。実際彼はダイと一緒にロン・ベルクから稽古をつけられたのでそこで覚えたのかもしれないが。

このあと親衛騎団がルーラで去ったあと、ポップが思わず追いかけようとして、ダイに引き止められるシーンが有る。「この前と同じだろ」というセリフが加えられていた。これは原作にはなかったオリジナルシーンだ。

そしてバーンパレスに戻った親衛騎団のうちアルビナスが修復を依頼するところで、ハドラーがアルビナスの傷を認め修復を伝えるシーンが有る。これはアニメオリジナルだ。のちにマァムがアルビナスを撃破するときに、アルビナスのハドラーへの想いを愛だと認識するシーンがあるが、果たしてハドラーはアルビナスのことをどう思っていたのかは作中で触れられることはなかった。もしかしたらこの追加シーンはアニメ制作陣による、それに対する1つのアンサーなのかもしれない。

そしてこのあと、今回の主役であるチウと仲間たちの活躍が描かれるわけだが。今回はマリンスライムのマリべえがかわいすぎるというのが最大の注目点ではなかろうか(笑)。海の中を潜航して魔宮の門を見つけるあたり、扱いがすごい。それまでダントツの「カワイイ」ポジションを誇っていたゴメちゃんを、まさか陥落させうるニューフェイスの登場である。ゴメちゃんはダイとの絆やこれまでの活躍で不動の地位ではあるものの、このマリべえの動きと声は、ゴメちゃんファンを揺さぶるカワイさがある。原作を読んでいたときはまったくそんなことは思わなかったのだが、アニメになると大きな違いがでてきた。

原作との違いで言うと、これまでもそうだが、チウ登場回は音楽の力がすごい。やたらと明るい音楽が流れ、シリアスシーンをあまりシリアスに感じさせない効果がある。結果的にチウの登場シーンは作品全体としては多くないものの、妙に印象が強くなっている。

ダイ好きTVなどでも語られているが、ポップがズッコケキャラから成長して切れ者になっていく中で、ユーモア担当がいなくなってしまうという影響がある。そこで途中参戦のチウに、ギャグ的な動きが割り振られていくことが増えていくわけだが、私の感じるところではチウはポップとは違い、見栄っ張りではあるものの最初からけっこう勇気はあるキャラとして描かれている。ただし手柄を挙げたいという思いが強く、独断専行しがちだ。そこが今回の魔宮の門発見にもつながっていて、たしかに結果として手柄を挙げている。そして戦闘力は高くないものの親分肌的なところがあり、それが今回のフェンブレンから部下たちを守ろうという行動にまっすぐつながっている。実はこういうキャラはダイたちのパーティには他にはいない。
基本的に正義の味方たちはフラット組織である。一方で魔王軍は厳然たる武力と権力のピラミッド型組織である。フラット組織においては、手柄を立ててもそれ自体が権力獲得にはつながらない。そもそもが権力獲得ということの意味がないからである。チウの面白さは、それを知ってか知らずか、なぜか手柄を立てることにこだわりを見せる所だ。
一方でここで戦うフェンブレンもまた、後に明らかになるが、独断専行を行うキャラである。ハドラーの命令を無視してバランとダイを討とうとして、やられてしまう。今回も、不必要な残虐さを発揮したことによって、魔宮の門の情報を漏らした上に、バラン介入の余地を作ってしまった。
バランはバランでよく考えればバーンに対して魔王軍離脱の意思を明確に表明しないままに勝手に動き回っているという意味では、独断で動いているとも言える。
チウ、フェンブレン、バランという「勝手な脇役たち」の邂逅を魅力たっぷりに描くこのエピソードには、ダイの大冒険という作品世界の厚みを感じる。

あとそうだ、怒りのゴメちゃん突撃シーンの音楽がすごい(笑)。改めてアニメーションと声、サウンド、BGMの印象が残る回でもあった。


【Podcast】 Cast a Radio 「ダイの大冒険」を語る