ダイの大冒険(2020)の23話が放送された。ダイがベンガーナを襲うドラゴンたちを撃破して、しかし人間たちから怯えられ、自分の正体を知るためにナバラ、メルルとともにテランに向かい、竜の神殿でバランと初対面を果たすまでが描かれた。
今回は久々に戦闘シーンがガッツリと描かれる回だった。ポップがドラゴンに放つベタンは、迫りくるドラゴンの炎を重力波で吹き飛ばすという演出で、インパクトがあった。ポップ、強くなったんだなぁ、と感じさせる。
そしてヒドラと戦うダイは、ヒドラの背中を駆け上がり、縦横無尽に動き回る。竜の紋章を発動させたあと、ライデインを落とすところまでも非常にダイナミックな戦いの描写だった。なるほど、クロコダインやヒュンケルなど、これまでダイが戦ってきた強敵というのは、すべてサイズ感としては人間とあまり変わらない大きさである。だから、基本的には「格闘」の域に収まる戦闘描写となるわけだ。しかし今回のヒドラのように巨大モンスター相手となり、ダイとサイズがまったく違う場合には、格闘ではなくて「怪獣退治」とでもいうような戦いぶりになってくる。逆にいうと、「燃えるライバルとのバトル」というのはサイズがある程度近い関係でしか成立しない、ともいえるだろうか。
この「怪獣退治」のほうの最たる形が、後に出てくる鬼岩城との戦いであろう。ということでいまから鬼岩城との戦闘が楽しみだ。
しかし、ドラゴンキラーというのは見てわかるとおり形状が特殊な武器で、柄を握って持つわけでなくて、手甲のようにはめる形となっている。この形だと、通常の剣術とはかなり異なる戦い方が必要になってくるような気がする。つまり、斬撃が使いにくく、代わりに刺突攻撃が主体になるということだ。こうなると、ダイが学んでいるアバン流刀殺法は充分に力を発揮できないような気がする。ヒドラを倒すときに、アバンストラッシュではなくて、刺突からのライデインという戦法を選んだダイはおそらく正しいのだろう。
そのあとで登場するキルバーンにドラゴンキラーを投げつけるシーン。大事な主力武器を手元から投げちゃっていいのかなぁ、と昔から思っていたのだが、上述するようにアバン流の通常の剣術からすると使いにくいドラゴンキラーは、特にドラゴンを倒したあとならいらない、という判断は、これもまた正しい気もしてきた。さすがダイ。
ところで、敵に剣を刺してそこにライデインをして電撃で大ダメージ与えるって、よく考えたら最後に大魔王バーンに仕掛けている技だなと気づいた。見方を変えると、この戦術を最初に食らったのはバーンじゃなくてヒドラだったという話(笑)。
さて、そのキルバーンであるが、原作でもそうなのだが、この場面では1人で登場する。ピロロの姿が見えない。後に明らかになるとおり、キルバーンとはピロロが本体で、彼が操る人形だった、という設定があるわけだが、そうなると必ずピロロはどこかにいないと操れないわけである。もちろん、魔力を使って遠くから操ることもできるのかもしれないけど。しかし、そこまですごい魔力をピロロが持っているようにも見えないし…。この場面では、壁の上の方にでもいるんだろうか?
そしてキルバーンが、ドラゴンキラーを最後にポイッと投げるところで、原作や91年版アニメではドラゴンキラーが高熱で溶けていくような描写となっている。しかし2020年版では、ほとんど高熱という印象はなく、むしろ酸かなにかわからない力で剣を風化させていくように見えた。
これは、先日のPodcastで妄想として語った「ひょっとして原作とは違うエンディング展開を見せるのではないか」というネタにつながる可能性を感じている。勝手に(笑)。キルバーンが魔界のマグマを血液として動作する人形という設定がひょっとして変わる…なんてことがあったりしないかと。まあ、普通に考えたら可能性は低いだろうけど、妄想としてちょっと楽しみにしておきたい。
Podcastでも語ったが、私はダイの大冒険が心底好きだけど、エンディングでの「キルバーンが実は人形でみんなを欺いてました」展開はイマイチ納得感が持てていない。もしそこが変わるなんてことがあるとすると、個人的には最高なのだが。
あとは本編に関して言うと、今回後半でダイが1人で竜の神殿に向かうところで流れる音楽が、悲しみを感じさせる美しく心に残るような音楽でとてもよかった。林さんの音楽、いいですねぇ。
最後、竜の神殿で竜水晶が話すのだが、この声がなんというかやたらロボット感あった。実際のところ、水晶は生命体というよりも、知能を持ったロボットみたいな位置づけだと思うので、声にロボット感あるのはおかしくないのかもしれないけど、とはいえダイの大冒険世界にはあんまりロボットいないし、面白いっちゃ面白い。キラーマシンもこの世界だと乗り込んで魔力で動かす機械という感じだったし、自立式のソフトウェアを積んだロボットは存在しないように思う。そりゃそうだ。しかしじゃあ、竜水晶はなんなんだろう。
ということで次はバランとの戦いだ。91年版アニメはご存知のとおり、この次の戦いで残念な打ち切り改変エンディングを迎えてしまう。そこを乗り切ることで、ダイの大冒険ファンはようやくひとつトラウマを越えられるのかもしれない。