ダイの大冒険(2020)の25話が放送された。今回は、テランでのダイとバランの初戦で、バランが竜の紋章を共鳴させてダイの記憶を消し、ポップたちが戸惑うシーンが描かれた。そして竜騎衆の初登場もあった。

冒頭、バランがクロコダインを翻弄するバトルシーンの描写がなかなか迫力があった。一方的な戦いに見えるが、実はよく見るとクロコダインはバランのパンチ連撃をちゃんと防御していた。これはアニメオリジナルの表現だと思うが、どうしてフルボッコではなくちゃんと防御させていたのか。クロコダインは結構強いのだということをこまめに見せていってくれる狙いなのかもしれない(笑)。

とはいえ、そのあとで地面に叩き伏せられたクロコダインのやられざまがかなり痛々しい。これは原作からそうだが、クロコダインは肉体の耐久力が高いがゆえに、新しい敵の強さを遠慮なく叩き込まれ、盛大にやられるシーンが少なくない。これはつまりクロコダインゆえに成り立つ描写なので、演出上彼の果たす役割は大きいと言えるのだが、しかしまあほんとに、やられるよねぇ…。

前回、バランのギガブレイクを食らって湖に叩き落されたダイをレオナが救出するシーン。ここでダイの胸元が映るのだが、レオナが「ひどい傷」と言う割に、全然ひどい傷に見えない(笑)。

もちろんバランは息子相手だから手加減は相当している。だが、そうはいっても作中最強クラスの技である。いかにダイがドラゴニックオーラを纏っていたとしても、深々と斬られていてもまったくおかしくないはずだ。それが、なんとなく肌と服がチリチリになっているだけ。なんなら、物語序盤でキラーマシンに乗っていてベギラマを食らった悪の賢者バロンあたりのほうがよっぽどひどいダメージだったような気がするのだが…。

前にnoteで書いたかPodcastで言ったかのとおり、今回のダイの大冒険アニメは放送時間帯も含めて小学生くらいの子供が見ることを想定されているので、流血などの凄惨さを感じるシーンを抑えるという演出上の配慮は十分にあるのは分かるが。しかしそれならいっそ、ダイの肌の様子を見せず、レオナの声だけでその威力とダメージを視聴者に想像させるような演出のほうがよかったんじゃないかというのは率直に思う。

レオナのベホマで体力を回復したダイが、バランのギガブレイクの妨害のために剣を投げてギガデインを空中で止めるシーン。

これは原作どおりだが、改めて思うのは、ギガブレイクというのはかなりスキだらけというか妨害しやすい必殺技だなということだ。魔法剣の中でも、ダイが以前使った火炎大地斬であれば、メラ系呪文なので、呪文発動とそれを剣に帯びさせるまでを自分の身体の近くで行うことができる。しかしデイン系呪文を使う魔法剣になると、落雷という身体から離れたところでの呪文を剣に帯びさせる必要があることから、その呪文を狙って妨害することで簡単に阻止することができてしまう。
実際、今回のギガデインを妨害されたバランは「馬鹿な」と焦っているが、いやいや、百戦錬磨の竜の騎士ならそれくらい想定しておくべきではないか、と思う(笑)。

後に、真バーンとダイ・ポップの最終バトルでは、ポップはバーンに天地魔闘の構えを使わせるために
「あんたは今まで天地魔闘の構えで相手を仕留め残ったことなんてねえだろ?」「どんなにすげえ奥義だか知らねえが二度も三度も見せるべきじゃなかったな。確実に勝ちたいなら普通に攻めてくることをおすすめするぜ。大魔王さん」
という挑発を仕掛ける。その挑発に乗ったバーンは、秘策を用意していたポップによって天地魔闘の構えを破られるわけだが。
今回のバランのギガブレイクも、それに通じるものがある。もっとも、デイン系呪文の魔法剣に関して言えば、ダイ自身が使い手なので、その弱点について認識していたということも大きいだろうけれど。
ポップはひょっとして、このバラン戦の経験から、最後のバーン戦につながる「相手の奥義の破り方」のヒントを学んでいったのかな?と考えると面白い。

あとは、バランが「ダイを思う仲間の力が…」と心のうちで語るシーン。ここでダイの背景に浮かぶキャラが、マァム、マトリフ、アバンなども含まれているのだが…。

いや、バランさん、あなた、そのへんの人たちは会ったことないでしょ。会ったこともない仲間のことも分かるとは思えないので、まあこのへんは視聴者に対して「ダイと仲間」という構造を印象づけるための演出だと思って、あまり深く突っ込むところでは無いかもしれないが。

エピソード後半、記憶を消されたダイが、なぜそのようなことになってしまったかをパーティーの面々が考えるシーン。原作からそうだが、クロコダインの分析が的確すぎてびっくりする。ほかの誰も論理的な仮説を出すことができない状況で、圧倒的にわかりやすく仮説を提唱するクロコダイン。すごい、すごいぞぼくらのクロコダイン。
ザボエラはクロコダインを幾度も能無し呼ばわりしているし、最後サボエラと決着をつけるときでも、「頭の悪いオレだが」と自らを卑下したようなことを口にしてしまう。まあ、そのあとでザボエラをついに討つことができるので、別に構わないとは思うんだけど、このダイ記憶喪失のときの明瞭な仮説構築と高度な説明能力を見るに、クロコダインははっきり言ってめちゃくちゃ賢い。竜の騎士の秘密を知らず、そのうえバランがダイの記憶を消した真意をまったく推察できなかったザボエラなんかに比べると、その賢さが際立っている。

私はこう説明をつけたい。おそらく、クロコダインは、「自分のこと」になると利己的な智謀知略を働かせることがまったくできないタイプなのだ。しかし、仲間の身に起きたことに関して、さらに自分自身も経験した事象に関しては、鋭い考察能力を発揮できる男なのだ。これはザボエラと対照的で、ザボエラは利己的なことに関してのみ智謀知略を発揮するが、彼は仲間と信頼をして共同作戦をとるようなメンタリティは一切持っていない。
最後にクロコダインがザボエラを討つシーンでは、その思考とふるまいの違いが凝縮されているという意味で、大変に面白い。ああ、そのシーンのアニメ化も待ち遠しい。

しかし本エピソードのクロコダインの仮説語りシーンに話を戻すと、最後いいところでレオナに「そんなことより」と思いっきり否定されて遮られてしまうのが悲しい。というかそれによって、クロコダインさんの圧倒的仮説&解説シーンのありがたみをみんな全然感じられなくなっているのではないだろうか!?みんな、もっとクロコダインの賢さに着目してほしい!(笑)この推察の見事さ、名探偵クロコダインという称号を差し上げたい。

なんか今日のnoteももっぱらクロコダインの話ばかりであった。なぜだ。

最後にふと思ったんだが、ラーハルトの肌の色って紫だったの?なんか青だった印象があるのだが。それはどれを見てそう思ったんだろう。謎…。