ダイの大冒険(2020)の27話が放送された。vs竜騎衆のうち、ガルダンディーvsポップ戦、ボラホーンvsヒュンケル戦から、ラーハルトvsヒュンケルの前半戦までが描かれた。

漫画との違いとして、シーンの描かれる順番が少し変わっていた。原作だと、ヒュンケルがラーハルトのハーケンディストールを食らって倒れるところのあとで、テラン城にバランがルーラで着地していたが、アニメだと今回27話の一番最初にバランが着地していた。もちろんルーラの移動速度を考えるとさっさと着地することにリアリティがある、ということかもしれないが、視聴者にとってリアルな時間軸の流れというものを感じさせるという観点でこういう演出になったのかもしれない。

そして、ガルダンディーに殺されそうになったポップを救うべく、ブラッディースクライド一閃、ガルダンディーの右肩をぶち抜いたヒュンケル登場。よく考えると、このシーンは26話の最後でも描かれていたし、だからこそ前回の我々のPodcastでも取り上げた。そのシーンがそのまま27話のここでも組み込まれていた。この意図としては、週間放送なので前回の流れを視聴者に思い出してもらい、話に没入してもらうために感情を高める、ということだと思うが、事実としては同じシーンの繰り返しなのでストーリー進行速度を多少低下させる効果がある。もちろん、さして長い繰り返しではないのだが。ただここから思うのは、2020年版ダイの大冒険はもしかしてここから物語進行速度がこれまでよりは少しスローダウンする可能性があるのではないか?ということである。
これまでnoteやPodcastで語ってきたように、2020年版の進行はとにかく早かった。91年版アニメの約2倍の速度で進み、およそ旧ジャンプコミックス1冊分をアニメ2話で描くというテンポの良さであった。であるがゆえに、ジャンプコミックス37巻 * 2 ≒
75話程度でバーン戦決着まで完結するという予想を立てており、したがって、2020年10月に放送開始して、2022年3月までの6クールで放送終了するであろうと考えていた。
しかし、今回の兆候を考えるに、もしかすると6クールで終わらせず、もう1クールほど追加される可能性もゼロではないかもと思い始めた。理由としては、91年版アニメの呪縛から解放された、ということを考える。91年版は、打ち切りに伴い、バラン初戦を強引に改変して終わりを迎えるという残念なクロージングであった。今回の2020年版は、約30年のときを経て、当時の制作陣の方々ができなかった「最後までダイの大冒険を描ききる」をやり直す、いわば作り手、そして視聴者にとっても「やり直しと完遂」の物語というメタ的な位置づけがあるように感じる。これは、作品は違うが、アニメの新世紀エヴァンゲリオンが、最初の放送から25年の時を経て、庵野秀明監督と今の制作陣たちによってシン・エヴァンゲリオンとして完結を迎えたことに少し通じるところかと思う。
この観点で見たときに、91年版アニメで描かれたバラン戦の最初までは駆け足で物語を進めるが、ここから先は場合によってはじっくりと時間をかけて描くということもありえるのではないかと思うのだ。ダイの大冒険という作品を、アニメーションと、作り手もファンも心から納得行く完結を迎えるために。
・・・というのはまあ私の願望と妄想が多分に入っているかな(笑)。

話を本編の中身に戻そう。そもそも今回ふと思ったのは、なんでヒュンケルはポップのところにやってきたのだろうかというストーリー展開のことである。普通に考えたら、ダイが記憶喪失しており、バランが奪いにやってくるテラン城が決戦の地である確率が極めて高いので、ヒュンケルはテラン城に直行するべきだと思うのだが…。もちろんそうなっていたらポップは竜騎衆に惨殺されていたはずなのでそこでダイの大冒険は終わっていた気がするけど…。勝手な裏側妄想としては、戦いの到来を察知してダイたちのもとに駆けつけようとしたヒュンケルのアバンのしるしが輝いて、なんとなくそれがポップのもとに導いた的な。あるいはもう、ゴメちゃんこと神の涙の力でヒュンケルの虫の知らせが強化されたとかそんな説明でもいいかもとか思ってしまう(笑)。

そしてポップ対ガルダンディー。もうこれは、イオ劇場。最高にかっこいいイオ。というかそもそもダイの大冒険で、このシーン以外にイオは攻撃呪文としては使われていない気がする(ハドラーが手でパン!とやったくらいか)。ゲームのドラゴンクエストシリーズでは、攻撃呪文は3段階のランクが基本形としてあるが(イオ→イオラ→イオナズンなど)その一番下のランクの呪文で決着をつけるという意味で、むしろこのガルダンディー戦は印象深い。そのバトルがかっこよく描かれていてそれだけで大満足であった。ただ、ガルダンディーは果たしてイオのダメージと、地面に叩きつけられたダメージのどっちが大きかったのかなと言う気はちょっとする(笑)。

ボラホーンに関して言えば、「コールドブレス」と声に出してからブレスを吐いていたのがちょっとおもしろかった。どうやってしゃべりながら吐き出すんだろう。
そういえば、ヒュンケルがかつてダイの魔法剣を見て「いかなる人間も剣と魔法を同時に繰り出すのは不可能」と言っていたが、ボラホーンは呪文ではないけどブレスを出しながら謎のお得意武器で攻撃しようとしていたので、実はこれ魔法剣ならぬブレス武器攻撃という他に類を見ない特技なのではないかと今更気づいた。
※と思ったけど、よく考えたら初期クロコダインが奥の手の焼け付く息を吐いていた。同時攻撃ではないけども。しかし彼は正々堂々を好むので、ひょっとするとあまり焼け付く息は使いたくなかった可能性はある。

しかし、ガルダンディーの羽根で相手を弱らせてから攻撃する戦い方とか、ボラホーンの相手をブレスで凍らせて攻撃する戦い方とか見てると、なんか竜騎衆はラーハルト以外は力押しよりも罠にはめる系の戦い方が目立つ。結局そのあたりがダイの大冒険で描かれる「相手を罠にはめて勝とうとする奴は戦闘力じたいは低い」法則なのかもしれない。最たる例はキルバーンかもしれないが、まああれは人形なのでなんともというところではあるが。
ハメ手好きというと、フレイザードもそうだったし(氷炎結界呪法)、ザボエラなんかはやることなすことだいたいハメ手。正攻法はできない敵として描かれる。そして、その手の敵はだいたい因果が巡って最後はいいところなく倒される。読者のもやもやが残らないようにきれいに回収していく。
もっと先のストーリーだが、最後の最後、もはやこれまでの作戦も地上消滅もどうでもよくなってパワー一択でぶん殴りにくる真バーンを見ていると、倒されはするものの、意外と彼にとってすっきりした最期だった可能性はある。

また脱線した。話を戻そう。
ラーハルトに関しては、とりあえず鎧の魔槍が伸びるんだということがわかったのが今回の一番の収穫だった(笑)。ヒュンケルの兜を割るシーン、まったく一歩も動いていないところを見ると、あれは移動して突きにいったわけではなくて、魔槍の特徴であるノビール突きを使ったのではないかと思ったわけである。鎧の魔剣も、ヒュンケルがダイと戦うときに、おでこにつけているときには伸びたうえにムチのようにしなってやりたい放題やっていたので、たぶんそれに近いことがあるのではないか。ロン・ベルクがすごいのか、この魔剣の金属がすごいのかはよくわからないが、とんでもないスペックの武器である。たぶん後に出てくるポップ専用武器のブラックロッドが伸びるのも、同じ金属でできているからなのではと推察される。

さて、来週はついにラーハルトが語る、ダイとバランとソアラの悲しい過去の物語だ。いよいよここからがバラン編のクライマックスへ!楽しみである。