ダイの大冒険(2020)の第12話が放送された。ダイとポップがライデインの修行をして、ヒュンケルにリターンマッチを挑み、ライデインを直撃させるまでを描いた。
今回気になったことは、「間」である。
いままで、このnoteでは基本的に2020年版のダイの大冒険に対して好意的な評価を続けてきた。別にそれはなんらかの義理があったわけではなくて(笑)どちらかというと自分が原作ファンであるという自認があったからこそ「懐古厨」的な立場にこだわってしまい、新作アニメとしてフラットに評価しなくなるのがダメだなと思ったからである。もちろん、20年以上に渡って原作を何度となく読み直している自分が今回のアニメをフラットに評価するのは不可能なのだけど、とはいえ、今のアニメの良い部分を積極的に探して、楽しむことが考えとして健康的だと思うのだ。
そういう意味で、これまでPodcastで語ってきたように、2020年版アニメは原作へのリスペクトが随所に感じられた。また声優さんや制作陣の方々の思い入れもLivedoorの記事シリーズなどで読めるように、かなり強いものがあることが伺えて、原作ファンでも初見の視聴者でも楽しめるのかなと思う。
という思いを持っているので、今回の第12話に関してはあえてちゃんと、気になったことは触れたい。
間が、足りない。
特に顕著なのは、ハドラーの回想の中でのバーンとハドラーの会話である。ヒュンケルのどこがそんなに良いのかと問うハドラーとそこに答えるバーンの会話。そこに、間がないのだ。
原作だと、ハドラーの質問に対して、バーンの返答が「………目だ…」となっており、三点リーダ記号を複数つなげることで、かなり回答に間をもたせたことが伺える。この間はどういう意味を持つのか?それは、あとにもハドラーが語るように「バーン様の心中は計り知れない」ことを演出しているのだ。この間の時間に、ハドラーの心に去来した不安「変なことを聞いてしまったのか?叱責されるのか?馬鹿にされるのか?」というものが凝縮されていると私は考えている。バーンの謎めいた恐ろしさを読者にも伝えているのだ。
91年版アニメでは、このシーンに数秒の間をとっていた。
だが、2020年版アニメでは「目だ」と答えるバーンの返事にまったく間がない。これでは上述したハドラーの恐れが伝わってこない。
これまでnoteに書いてきたように、今回の2020年版アニメには時間を短くしなくてはならないというなんらかの制作上の制約があるのだろうということは想像している。結果的に、かなり「テンポよく」言い方を変えれば「短縮した」表現が出てしまう。とはいえ、それを感じさせないよう演出してきたことをこれまでは感じている。
だが、今回は、そこが残念ながら「短縮」だったと思う。せめてもう3-5秒、間を作ってくれたらよかったのだが。
あとは原作との相違した表現として、今回ヒュンケルが牢の中でマァムに手を挙げるシーンで、原作ではビンタをしていたが、今回はビンタのシーンは描かれず、なぜか骸骨兵士が牢の外からその様子を眺める描写になっていた(笑)。女性に暴力が振るわれるシーンをあまり描写しないという配慮があるのかもしれない。なお、91年版でも実は配慮があったようで、ヒュンケルは壁をパンチしていた。画像はnoteのカバー参照いただきたい。
というような形で、今回は思ったこととして、やや注文的なことを書いた。時間的制約はある中で大変かとは思うが、なんとか原作の心理描写をうまく伝えていってもらえたらと期待したい。