ダイの大冒険(2020)第33話が放送された。ザボエラとハドラーがダイたちに闇討ちをかけるも撃退され、そのあとでマトリフがアバンの書をダイたちに渡すまでが描かれた。
原作との違いでいうと、冒頭のサボエラとハドラーが魔王軍拠点(奇岩城)の中で、作戦会議をするあたりのシーンが丁寧に描かれていた。原作だと、無言でザボエラとハドラーが目配せをするだけで、早速夜襲に入っている。
そのシーンの会話を書いてみるとこんなかんじ。
ハ「ザボエラ、いますぐおまえの妖魔士団を呼び寄せろ」
ザ「えっ」
ハ「オレも親衛隊を招集する。残存する魔王軍の総力を結集してダイたちに一大攻勢をかけるのだ」
ザ「おまちくださいハドラー様。その作戦は以前失敗しております。ダイたちにはこれまでのような正攻法では勝てませぬ。策謀をもって暗殺するのが得策かと。」
ハ「(悩むハドラー)」
ザ「このザボエラにおまかせあれ。勝者とは強い者のことではありませぬ。たとえどんな手を使っても最後まで生き残っていれば勝者と呼ばれるのです。」
ハ「うーん…」
ザボエラファン(?)にとってはうれしいセリフマシマシかもしれない。実際、このやりとりが入ったことによって、なぜハドラーが正攻法ではなくて闇討ちを選んだのかというのが、初めてダイの大冒険に接する視聴者にとってはだいぶわかりやすくなっている。そして同時に、ザボエラというキャラの思考がよくわかる。
このあとの小屋(メルルの家)のシーンで、ヒュンケルが満身創痍ながらも鎧の魔槍をとって外に出ようとするところ。ここで、原作よりもアニメだと、かなりキツそうなことが伝わってくる。
しかしふと思ったのだが、ベホマという呪文は、体力は回復できるものの、傷ついた体そのものを治す効果はないのだろうか。ヒュンケルは後に、ブロキーナ(ビーストくん)に、「君の身体は治らん」と言われているが、それはこのあとの度重なる死闘の結果だと思うので、まだこのバラン編の時点ではそこまでではない気もするのだが。
ドラゴンクエストのゲームだと、HPというゲージは1種類しかなく、それが満タンだろうが1だろうが戦闘能力それ自体には関係なく、そして0になったら死亡する、という極めてデジタルな扱いで(それはそうなんだけど)体力と生死という概念は存在している。
それを、漫画「ダイの大冒険」として演出する際に、「HP」と「傷」と「蓄積ダメージ」の異なる3つのパラメータに分けたのは、見事な仕掛けだったと改めて思う。ベホマはたしかに都合がよい呪文ではあるものの、基本的にはHPにしか作用しない(ように見える)。そして、数値よりも、どちらかというと精神状態が耐久力に大きく影響してくる。加えて、「集中力」も重要なパラメータとして扱われている(ように感じる)。
たとえばクロコダインが信じられない耐久力を発揮したのは、特に先のバラン戦のギガブレイクを2発耐えた所だと思うが、そのときにはポップの捨て身の竜騎衆への突撃を知り、心理的なモヤモヤがなくなったことが大きい。加えて、あえて挑発的にギガブレイクを撃たせることにより、インパクトの瞬間に集中して防御をしたことも、ギガブレイクを耐え抜いたことに大きく寄与したように思える。
のちに、バーンパレスにて、チェス軍団の中で唯一のリビングピース、マキシマムがヒュンケルに対してスキャンを行い、HPが1ということを知るが、結局最後までそのHP1を奪えずに敗北する(倒すのはラーハルトだけど)。
このときのヒュンケルは、HPも1、傷も多数、そして蓄積ダメージはもはやとんでもない状態であったが、光の闘気を使いこなし、高い集中力を発揮していたため、駒軍団程度の攻撃であればなんとか耐えられたということだろうか。
さてエピソードに話を戻すと、このあとのシーンで面白かったのはハドラーvsマトリフのベギラゴン対決だろうか。アニメのシーンを見ていて思ったのは、「めっちゃ、ドラゴンボールのかめはめ波対決(セル編最後の、孫悟飯vsセルのそれ)っぽいなぁ」ということであった(笑)。
( https://www.youtube.com/watch?v=HCumWPAmN90 より画像作成)
アニメ版のドラゴンボールZから画像を借りてきたが、このかめはめ波がぶつかって球状になっている感じを、今回のベギラゴン対決はオマージュしているのだろうか?とふと思った。
とはいえ、実は原作漫画のエピソード掲載時期としては、ダイの大冒険のほうが早い。このハドラーvsマトリフが1992年の初頭であり、ドラゴンボールでのかめはめ波対決は1993年ということだ。
( http://www.dbmania.net/db-data-comics.htm の情報より。ダイの大冒険の連載時期は文庫版コミックの巻末情報より)
これまでPodcastでも、「ドラゴンボールっぽい演出」という話はちょいちょい出てきたが、やはりなんだかんだいってドラゴンボールという作品の影響力はいろんな意味で大きいんだろうなと思う次第である。
もっともドラゴンクエストに関しては鳥山明氏がキャラデザインしているわけなので、ドラゴンボールとはそもそも「兄弟」的な関係ではあるんだけど(笑)。
しかしこのあとで、ダイが加勢して、ベギラマのエネルギーを拳に集めて跳ね返すというのはどういう原理だったのだろうか。ついぞ説明されることなく、原作では描かれ、アニメでも同様に説明はなかった。いくら竜の紋章というかドラゴニックオーラがチート的な性質を持っているとしても、それができるなら今後使えるシーンはあったのではないかと思ってしまう(笑)。
それでいうと、ザボエラも、後に見せるそこそこすごい呪文「マホプラウス」をこのベギラゴン対決で使うことはできなかったのだろうか?とふと思った。しかしまあ、すでにベギラゴンの打ち合いになっている状況では誰も自分に対して呪文を撃ってくれないから使えないか。
さてこのあと戦いが終わり、マトリフがダイたちにアバンの書を渡すシーン。ダイが読もうとするか漢字(?)が読めずにレオナに読んでもらう所で、ついにギャグらしいリアクションが出たのがびっくりした。
これまでnoteでも書いてきたが、2020年版アニメだと原作にあったギャグ的な描写はかなりカットされていることが多かったので、このシーンでは原作そのままに、ポップがズッコケて目ン玉を上下させていたことが驚きだった。一応マトリフも微妙にズッコケている。師匠と弟子が同じようにツッコミ?に回るというのがよく考えたら面白いところだ。