ダイの大冒険(2020年版)第34話が放送された。剣を手に入れるためにダイとポップがロモス武術大会に向かうも参加できず、そこでマァムに再会し、チウとも出会う回だった。
今回は、冒頭にアニメオリジナルのシーンが追加されていたのが印象的だった。
ダイたち一行(大人数)で気球に乗り、拠点に戻ってくる。そのときに
レオナ「我が国の主要メンバーをすぐに集めてちょうだい」
アポロ「えっあの」
レオナ「ことは急を要します、急いで!」
アポロ「はっ」
バダック「姫様いったい何を」
ダイ「レオナ、おれたちは何を?」
レオナ「ダイくんたちはしばらく待っていて。休養でも修行でも、戦いに備えていて」
バダック「誰でもよいから説明してくれい!」
ヒュンケル「レオナ姫は国を率いての行動を起こしたようだな」
ポップ「おれたちはどうする?」
ダイ「どうしよう」
マトリフ「おまえらはまだ体力全開というわけではないだろう。まずは休養。黙って従え!おれも寝る」
という一連の会話が描かれる。そのあとにマァムが夕日の中を山中で修行するシーンが描かれる。そしてブロキーナが初登場し、マァムに武術大会のチラシを見せて、山を降りるよう告げる。
このあたりは、たしかに原作だと結構説明を端折って進めているところではあるので、今回のアニメで初めてダイの大冒険に触れる視聴者に対して、物語の展開と、各キャラクターの心中を伝えるという意味で、よい演出だったと思う。
特に原作にない、次の3人の発言・行動が印象的だった。
レオナ→有無を言わせず、三賢者や部下に行動を起こす指示を出す。人を動かすリーダーのふるまい。
ヒュンケル→そんなレオナを見て、役割に合った行動を認識する。これが、あとでの「長兄」の自覚の表れといえる。
マトリフ→ダイとポップに休養を命じる。アバンをかつて死なせたことを悔い、忘れ形見の弟子たちを死なせることがないように、休む大切さを伝える。
あとはダイがライデインを自力で使えるようになったシーン。ライデインを唱えると、黒雲が一瞬で渦をまいて出来上がり、落雷が走る。なかなか印象的だった。たしかに、なにもない青空から雷撃が落ちてきたらおかしいのだが、一瞬で黒雲を呼び出すのは、なんならラナ系呪文の要素も入っているのか?という気がして、そうなるとあれひょっとしてポップもライデインできちゃったりする可能性あるわけ?と思ったりした。
そのあとの、ダイがドラゴニックオーラを使って修行するも、オーラを使いすぎてガス欠を起こすシーンだが、ここでクロコダインが獣王会心撃を放ち、ダイにあっさりブロックされる描写がある。これは原作でもそうだが「まいったな、オレの最強の技を」と白旗を上げるように言う。
かつて私はこれを読んだときには特になにも感じなかったのだが、今改めて、クロコダインの活躍というか、精神面でのチームへの貢献ということに気づいたのちに、このシーンを見たときにふと気づくものがあった。それは、「クロコダインは戦士としてまだ成長することを諦めていなかった」ということである。たしかにダイに獣王会心撃はもう通じない以上、漫画のセオリー的に言えばクロコダインはここから弱体化していってもおかしくないところだ。しかも、彼はアバンの使徒ではないために、急激に成長するための「資格」がない。もう急激にパワーアップすることはできないのだ。
しかし、このあとで彼はバルジの大渦に飛び込んで、命がけで獣王激烈掌を習得する。そして親衛騎団相手には、シグマの腕をねじ切ってメドローアのためのスキを作ることに成功する。最終的にミストバーンにはほとんど通じなかったかもしれないが。
いずれにしても、ここからのクロコダインは、個人で戦闘力を発揮するよりも、チームのアシストとして戦闘場面で貢献するようになる。そのために、新技習得も含めて、個人での強化を図っているのだ。
アバンの使徒ではない=主人公格ではないながら、重要な「バイプレーヤー」として活躍を果たすために成長を諦めなかったクロコダイン。そのきっかけが、このダイへの獣王会心撃のシーンにあるように見えるのだ。
さて、本編に話を戻す。武術大会に申し込もうとルーラでロモスにやってきたダイとポップ。マァムとの再会を果たすシーンで、原作にあったポップの胸ツッツキが変更され、顔を近づける行為に変わっていたのは、これはもう2020年の表現基準に則るということでは、当然だったといえよう。キービジュアルとしても、武闘家マァムが素足から黒タイツになっていたことは今回のアニメの放映前から言われていたことであるが、それらもすべて一貫している。それはいいのだが、顔を近づけただけの行為だとすると、そのあとにマァムにぶん殴られて、さらにはチウにも攻撃されるポップがどうにも不憫ではある(笑)。原作だと、そのときのチウが「あのマァムさんの豊満かつ清らかな胸を汚れた指でつつきおって」という、怒りながらも、よくセリフを見ると非常に興味深いことを言っているところがあって、そこが結構好きだったのだが、そのセリフも当然アニメでは変更になっている。それでいて、のちの変態呼ばわりは変わらないので、なんというかここにおけるポップは色々とドンマイなところだ。
しかしこの、チウがマァムのことを好きだということは、いわゆるダイの大冒険キャラたちの三角関係図的なところで、ほとんど触れられたことがない気がする。よく語られるのは、
ポップ→マァム、ヒュンケル→マァム、エイミ→ヒュンケル、メルル→ポップ、この5人の五角関係かと思うが、待て待て、チウ→マァムも入れてあげてはどうだろうか。ということをあえて今提唱したい(笑)。
このあと、マァムに対してダイとポップが武術大会に来た経緯を語るシーンで、父子の戦いを聞いたマァムは、2人に対して「だったら、優勝しても剣を受け取らない」なる発言をする。ここ、原作では「棄権する」となっている。マァムのキャラを考えると、共感度の高い彼女の思考経路からすると、直情的に「棄権する」というほうがしっくり来る気がする。「優勝しても」というifが入り、かつそれが自分の実力を示した結果だということになると、彼女は自分の武力にかなり自信を持っているということが、感情的になった場面でも変わらずに内心にある、ということになる。ここはどうしてセリフを変えたのか、制作陣の方に聞いてみたいところではある。
最後、ザムザがロモス王の横で策謀の内心をぼそっと語る所で本編は終わる。ここに関して、原作でもそうなのだが、思うことは2つある。まずはロモス王の人を見る目のなさ(笑)。でろりんたち偽勇者の心を見抜けず、彼らに覇者の冠をあげてしまいそうになり、でもそれがダイの殴り込みによって間違いだったと分かった過去があるわけだが。今回もザムザの奸計にまんまと引っかかっているあたり、ロモス王の人を見る目のなさはもはや改善しないのだろう(笑)。
そして、ザムザのこの奸計は、強い人間たちを集めて超魔生物実験の被験者にしようという意図があったわけだが、結果的にはこの武術大会によってダイとマァムは再会し、ほかにも強い人間たちとダイが引き合って、縁が生まれてしまう。それが最終的に、バーンのし掛けた地上消滅作戦に対して、それを食い止めるためのメンバーになることにつながっている。むしろそういう意味で、ザムザが余計なことをしたばっかりに、のちのバーンの作戦には予期せぬ穴が空いてしまったといえよう。このあたりも、真意を隠して、地上侵攻をお遊びでやっていたバーンの「舐めプ」によるミスと言えなくもない。
さて、次週はみんなが待ち望んだ(?)ゴメスvsチウだ!