ダイの大冒険(2020)の17話が放送された。バルジの島における、ダイたちの夜襲から魔王軍の待ち伏せ、クロコダインの加勢とヒュンケルの氷魔塔破壊&マァム救出までが描かれた。
今回、冒頭にいきなりフレイザードが1人でブチ切れるシーンが描かれた。氷漬けにしたレオナを前に、魔王軍総掛かりでダイを討つ作戦のはずなのにレオナの見張り役にされたことに怒り狂い、レオナを粉々にする寸前にまでいってしまった。しかし氷の冷徹さをなんとか取り戻し、それは踏みとどまった。
もちろんこんなシーンは原作にはない。なぜこんなシーンが作られたのかを考えてみたい。おそらく1つの理由は、初めてダイの大冒険を見る視聴者に対して、総掛かり攻撃のときにフレイザードは何をしていたのか?というのを予め見せておくことで、フレイザードがハドラーたちと行動をともにしていない背景を伝えるということだろうか。もう1つ理由を考えるとするならフレイザードという「栄誉に狂った悪役」というキャラクターを今回から見始めるような視聴者になんとなく印象づけておくということかもしれない。そもそも17話ではフレイザードの出番はここで終わりである(笑)。あと2話くらいの中で、フレイザードは弾岩爆花散を仕掛けて、ダイの空裂斬に撃破され、アーマード化するもダイの引き立て役として倒されるという、大事な役割がある(笑)。貴重な出番で、新規視聴者に対して印象をつくっておくのは必要だ。
あとはザボエラがバダックに仕掛けるザラキの描写が、91年版と比べると原作準拠になっていたことに気づいた。91年版ではおどろおどろしい声とともにザラキがかかるが、赤黒い演出でバダックが揺さぶられる。対して2020年版では、漢字のように見える謎の文字が円を描くようにバダックを包み、やたらカラフルなエフェクトで暗転するバダックの様子となっている。この謎の文字が原作にあるとおりだ。しかし、2020年版のこのカラフルさは、LEDによるカラフルな光というのが当たり前になった現代ならではの演出かもしれないなとふと思った。単純に、90年代よりコンピュータの作画や表現技術が上がっているということもあるのだろうけども。
何度かPodcastでも触れてきたが、2020年版アニメは爆発シーンの表現がかなりハデである。今回特にそれが輝いていた?のはバダック作の爆弾をポップがベギラマで爆発させたシーンかもしれない。91年版は、画面半分くらいを使って、やや遠景で爆煙が上がっているくらいだが、2020年版では世界の最後くらいの(笑)業火の中にポップと横たわるマァムが描かれている。
そして、クロコダインの登場シーン。2020年版は、ここの後光がすごい!完全に太陽を背にして、強烈な輝きを放っている。あまりの輝きに、ダイとゴメちゃんも神を見たかのような感動ぶりである(笑)。
のちに、バランがダイと共闘することになったときに、ダイの母ソアラを評して「太陽のような女性だった」と語り、そして最後の鬼眼王バーンと宇宙決戦で太陽に実際にソアラの輝きが宿るような表現がある。まさに太陽とはソアラのことであり、それを受け継ぐダイの象徴だと私は考えている。それを実は一番最初に言語化したのは、クロコダインであり、バランと戦うときに名言を口にする。
「生きとし生けるものにはすべて太陽が必要なのだ… それを奪おうとする者は断じて許せんっ!! たとえ力およばずとも闘うのみ!」
その言葉の力で、バランはソアラを思い出し、太陽の子という言葉をダイを前に心に浮かべる。
…そのクロコダインが一足先に太陽になってしまった!(笑)すごいぞクロコダイン!
たしかにこのバルジ決戦でのクロコダインの活躍はすごい。いかに雑兵とはいえ、ダイも手こずったモンスターや神官たちを秒殺していくのは圧巻である。
そしてこのあと、クロコダインはダイを中央塔までぶん投げる!これも原作にはないシーンである。意図としては、ダイが塔に走っていくシーンをカットして時短するということはあるのだろうが、結果的にクロコダインがマジですごいという演出になっている。
ダイの大冒険世界最強の遠投王の称号を差し上げたい。
と、見てきたように、17話の主役は、完全にクロコダインではなかろうかではなかろうか。
ところで…ヒュンケルはどういう方法で氷魔塔を破壊したのだろうか…。氷が砕けるわけではなく、光が溶けるような描写で塔が崩れていった。謎だ。塔をせっせと力で壊したわけではなく、塔の中核的な部分を破壊すると溶けるように崩壊するような仕様なのだろうか?
いずれにしても、ヒュンケルは役者だなぁ…。登場の仕方失敗したらマァムの命は…!戦闘の天才というより、相手の心を砕く天才なんじゃないかヒュンケル。
というわけで、次回はヒュンケルとハドラーの死闘だ!