ダイの大冒険(2020)の第13話が放送された。バルトスの遺言をマァムがヒュンケルに届け、ダイが無意識状態で魔法剣を使いヒュンケルに勝利、そしてフレイザードの暗躍で地底魔城が壊滅するまでが描かれた。
前回のnoteで、「演出における間の不十分さ」を指摘したが、今回はそこまでは気にならなかった。とはいえ、全体的に短縮感はあるなぁという印象はもった。
ただし、やはり2020年版は戦闘のアニメーションがかっこいい。コンピュータを使った作画技術の進展のためだと思うが、広い空間の中をダイとヒュンケルがダイナミックにチャンバラを繰り広げるのは、なかなか見応えがある。この洗練したアニメーションを楽しめるのは、2020年版の素晴らしい点だ。
今回、謎に感じたのはライデインストラッシュを食らったヒュンケルの動きだ。原作では、下記画像のように、ストラッシュを食らって爆風が晴れたあと、無傷に見えたヒュンケルの姿が現れるも、時間差で鎧が粉砕され、後ろに倒れるという時代劇的というか、西部劇的な描写がある。クライマックス、決着の描き方として、説得力がある。
なぜこうなるかという原理を考えるなら、ライデインストラッシュのダメージをいったん鎧は受け止めたものの、耐えられるものではなくて砕け、ヒュンケル自身も鎧を通過した電撃と闘気に耐えきれなかった、ということだろう。
しかし2020年版では、ライデインストラッシュの爆風が晴れたあと、ヒュンケルが前に数歩、進むシーンが描かれる。その後に、鎧が砕け散り、そしてヒュンケルは後ろ方向に吹っ飛んでいく。
これはいったいどういうことなのか。前に自力で歩いている時点で、ストラッシュの威力は受け止めきったわけなので、ではそこから後ろに吹っ飛ぶのはそれは何のエネルギーなのかと不思議に思える。無理くりに理由をつけるなら、これは鎧の魔剣が砕けたエネルギーがヒュンケルの身体を後ろ側に飛ばした、ということなのだろうか…。しかしここは普通に原作準拠の「西部劇的」な演出で良かったように思うのだが。
あとはマグマに囲まれピンチになったダイたちをヒュンケルが投げ飛ばし、自らは溶岩に消えるシーン。91年版では、ヒュンケルの全身が溶岩に沈んでいく様子が描かれる。一方2020年版では、やや違う角度からそれが描かれるのだが、最後、ヒュンケルの手がクローズアップされる。比較画像はnoteのカバーを見ていただきたい。
あれ? これって、どこかで見た画だよね…。
…もう解説の必要もない。ターミネーター2の最後のシーン、シュワルツェネッガー演ずるサイボーグT-800が溶鉱炉に沈むシーンとほぼ完全に一致である。さすがにサムズアップはしてないけど。
△ターミネーター2より引用
といいつつ、実はこれは原作準拠であった。原作でも、最後はヒュンケルの手だけのコマがある。
念の為、現実の時系列を整理しておくと、ダイの大冒険のヒュンケル戦は1990年の連載であり、ターミネーター2の公開は1991年である。そう、実はヒュンケルのほうが、シュワルツェネッガーよりも溶鉱炉に沈む先輩なのだ。SF映画史上に残るシーンはダイの大冒険へのオマージュだったのだ(※完全に冗談なので本気にされないよう)。
ヒュンケルはこのあとクロコダインに助け出されて地獄から舞い戻り、ハドラーを倒すわけなので、I’ll be backといえなくもない。が、実際にはダイたちを放り投げた時点では自分は死ぬつもりだったので、それを救ったクロコダインの功績はとてつもなく大きいといえるだろう。なにより、その後の会話がすばらしい。といいつつそのシーンは次週描かれるところなので、今日はここまで。