ダイの大冒険(2020)第79話が放送された。タイトル「銀髪のヒム」。ヒュンケルがヒムの拳の勝負に挑み、ヒムに勝利するも、王マキシマムが出現するところまでが描かれた。

今回タイトルが面白いなと思った。原作エピソードでは「銀髪鬼ヒム」となっているが、今回はその鬼がなくなっていた。ちなみにWikipediaによると「銀髪鬼(ぎんぱつき)とは、銀色の髪を持つ悪役、もしくは他者に悪役と認識された人物につけられるあだ名。」だそうである。なるほど、もはや作中でいわれるとおり、ヒムは悪役ではなくなったので鬼という表現がとられたのかもしれない。

しかしなんでヒュンケルはこんなチェスのことを知っているのか。アバンから教えてもらったのか、あるいはもっと前にバルトスから教えてもらったのか。謎だ。

ヒュンケルは勝負に出る前にすでにヒムのパンチをだいぶ顔面に受けている。このあとでヒムは「生身で人間が食らったらぐしゃぐしゃにひしげて原型も残らない」と言っているが、すでにこの時点でも結構オリハルコンのオーラのこもったパンチを顔に受けてなんともないヒュンケルはいったいどういうことなのか。やっぱりハンターハンターの「堅」みたいな感じで顔も含めて全身をオーラで防御しているから、なんとか耐えられているのか?

さて、アニメ版では今回のエピソードのなかで、ダイやポップたちとミストバーンとの再会が描かれる。
原作ではポップのセリフが「急激に敵の出現率が減る」だったのがアニメでは「敵が現れなくなる」と変わっていた。より口語的な表現になっていたともいえるが、原作のほうがあまりにゲーム的だったということかもしれない(笑)。

しかしこれ疑問なのだが、ここで現れたミストバーンは本当にダイに勝てるつもりだったのだろうか。のちにプロモーション・ヒムと、暗黒闘気ミストバーンが1vs1で戦うが、結果的にはヒムに圧倒されることになる。ダイにしても、空の技を含めて悪を滅する技を修得しているわけだし、さらにポップに至ってはメドローアがある。真ミストバーンにならない限りフェニックスウィングは使えないわけで、メドローアを打たれたらそれだけで消滅敗北する危険が高い。まあ一応マァムもいるし。1vs3で勝てるとはとても思えないのだが…。それとも、バーンの許可を得て真ミストバーンになるつもりだったのだろうか。実現しなかった闘いなので、よくわからないが。

さて場面はヒュンケル対ヒムに戻るが、ヒュンケルが岩を握りつぶしているシーンが描かれる。あれこれ、アニオリ?と思いきやちゃんと原作にも書いてあったが全然気づいてなかった。しかし、体力をつかうのになんで岩を握りつぶしている余力があるのかヒュンケル。結構まだ余裕があるぜ、っていうアピールなんだろうか。

アムドを解いたヒュンケルが軽く投げる槍の飛距離と高さがすごい(落下時間が相当かかったのを見ると、相当高く飛んだと思われる)。ヒュンケルどんだけ腕力あるんだ、と思ったが、いやそもそも鎧の魔槍は大チート存在であるロン・ベルクの武器であった。じゃあ全然武器が自力で空を飛んでもおかしくない(笑)。

あとはこのあたりのヒュンケルのセリフは原作と比べるとだいぶカットされていた。つながりとしては全然おかしくないのではあるが。

今回プロモーション後のヒムの演技には、本当に感情がこもっているというか、熱気がこもっている。ヒムが当初出てきたときには、声優三木眞一郎さんの演技はかなり抑えめというかロボット的な感じだったような覚えがある。むしろそれがあったからこそ、このプロモーション・ヒムは、まさにハドラーや親衛騎団の思いもこめて熱く、生きるようになった存在なのだということが伝わってくる。これはやはり文字で表現して脳内で再生して楽しむ原作マンガと、実際に絵が動いて声優さんが声をつけるアニメの大きな違いであるとともに、原作が好きな人にとっては「アニメがなんか違う」となりがちなところだったりするだろう。しかし今回、この三木眞一郎さんの演技は、その以前の鉄仮面ヒムのときからの変化も含めて、見事だと感じた。ぜひダイ好きTVにも出ていただき思いを語ってほしい(笑)。

このあと最後の勝負に至る前にヒュンケルが「友よ、見ていてくれ」と心の中で語るシーンがあり、その寸前には鎧の魔槍のカットが入る。これはもちろんラーハルトのことを意味しているわけだが、これしかしアニメで初めてダイの大冒険を見るという視聴者の多くがラーハルトのことをまったく思い出せないのではないか?とふと思ってしまった。いや、そんなことはないのかもしれないが。私だったら多分、このシーンを見てもさらっと流しちゃいそうな気はする(笑)。

さて、拳がクロスしたのち、先にヒムの顔が映り、彼は「勝った」といい「錯覚」する。しかし、もちろん勝負はヒュンケルの勝ちである。問題は、なぜヒムは、手にパンチがあたった感触もないであろうに「勝った」などと思ってしまったのか、である。ヒュンケルの拳が胴体にめり込んでおり、その衝撃を、じぶんのオーラナックルが突き刺さった衝撃と勘違いでもしてしまったのか?
あともう一個、ここのシーンの謎は、ヒュンケルのほうがヒムより身長が低い気がするし、手もちょっと短い気がするのに、クロスカウンターで、ヒムのパンチをもらわずに自分のパンチを先に胴体に当てることができたのか、である。
ボクシングにおいて、リーチの長さは勝負に大きく影響することが想像できる。リーチが長いほうが、確実に有利だろう。しかし、この場面では、手の短いヒュンケルが先に必殺の拳を打ち込むことができた。なぜなのか。
ひとつ考えられるのは、パンチで狙った部位が顔なのか胴体なのかの違いである、ということだ。つまり、胴体のほうが相対的に顔より前に出た位置にあるのだということならば、たしかに胴体にパンチを当てれば、顔にパンチをもらう前に倒せるとはいえるだろう。
背の低いボクサーからしたら、まっすぐにパンチを出したときにはボディに届くだろう(顔を狙うよりはリーチの面で効果的のはずだ)。

ヒュンケルは「奇跡のタイミングだった」というが、これはタイミングの勝負というより、打ち込む部位の勝負だったのではないだろうか(笑)。ボディーブローを選んだからヒュンケルは勝ったのだ。

拳を打ち込まれて倒れるヒムの声が、マジで死にそう。死にそうな人の声である。が、そのあとちょっとしたらまた戻る。

このあとでヒムに生きることを命じるヒュンケルの大説得。原作で読んだときにはそこまでではなかったが、これもまたアニメとして声優さんの声の演技として聞くと、いやこれはすごい長台詞であるし、見せ場だなぁと思わされる。「上手くない言い方」だとヒュンケルは嘲笑うが、いやいやあんたこれ相当な大説得ですよ。

そして、マキシマムが改めて登場。やっぱりそう、声は玄田哲章さんである。なんと強そうなマキシマム。しかしこのあとの原作を知る読者としては、逆にこの虚仮威し感が面白い(笑)。

さて、次回のエピソードタイトルは「チェックメイト」これはヒュンケルのセリフから取っているものと予想されるが、実はこれ原作では「王手」と書いてふりがなでチェックメイト、とついていた。将棋でいう王手は、チェスでいうチェックではないかと思うので、これはむしろ原作でなぜそのふりがながついていたのかが不思議だ(笑)。


【Podcast】 Cast a Radio 「ダイの大冒険」を語る