ダイの大冒険(2020)第77話が放送された。タイトルは「もうひとりの勇者」。地上パートが描かれ、ノヴァが超魔ゾンビのザボエラに立ち向かうも、ロン・ベルクに阻止され、そしてそのロン・ベルクが星皇十字剣でザボエラを撃破するまでが描かれた。

今回、原作であったフローラの「本当に悪魔の頭脳だわ、最初から自分の配下の怪物たちすべてに手を加えていたなんて」というセリフと、そのあとのおにこぞうA,Bによる「オレたちも死んでたらあんなやつの一部になっていたのか」というセリフというかシーンはまるっとカットされていた。まあそれは当然で、おにこぞうは今回はチウと出会えないので。ただフローラのセリフもカットしたことで、特にザボエラが事前に手を加えていなくても超魔合成はできたらしいということになった。

さて、このあとまもなく、超魔ゾンビの全身に刃が刺さりまくった状態がでてくる。これは原作からそうだったのだが、改めて見るとこのシーンは不思議ではなかろうか。というのは、超魔ゾンビの上半身にたくさんの武器が刺さっているということは、その高さまで攻撃した人間たちがたくさんいたということになる。正直さして強くないふつうの人間戦士たちが、そもそも超魔ゾンビの上半身の高さまで斬撃や刺突を繰り出すことが普通にできるのだろうか。いやそれができたとして、ノヴァやロン・ベルク、クロコダインたち実力者はそんな状況を放置していたのだろうか?自分よりはるかに戦闘力に劣る人間たちの無意味な攻撃を見過ごしていたとしたらそれは問題である。いやでもそれは指揮官であるフローラの責任なのかもしれないが。

そしてクロコダインが「このグレイトアックスすらも歯が立たんとは」というシーンで気づいてしまった。そうだ、彼の持っていた武器はロン・ベルクの作ってくれた武器なのだ。ロン・ベルクの武器のすさまじさは、これまでの親衛騎団バトルなどで明らかであったが、このチート武器をもってしてもザボエラを撃破できないというのは確かにこれはクロコダインの攻撃力の不十分さと言うべきなのかもしれない。

いまバーンパレスに行っているメンバーで、誰なら超魔ゾンビを撃破できるのか。ロン・ベルクの会話から察するに、ダイの剣を持ったダイのアバンストラッシュ(X)あたりなら問題なく倒せそうではある。またメドローアを修得しているポップでも多分撃破は可能だろう。というか、ポップに勝てないザボエラというのはそもそもどうなんだろうという気がする。ついこないだまで全然ザボエラのほうが魔法力上だったのにね。
ヒュンケルあたりだと勝てるのかどうかはよくわからない。なぜならおそらくヒュンケルより上の攻撃力を持つロン・ベルクの通常攻撃は通じないからだ。マァムも厳しいのではないか。
と考えると、ポップとダイさえいなければ、超魔ゾンビは相当強力なのかもしれない。

そして攻撃が通じなかったノヴァが生命の剣を発動させるシーン。ここは原作とけっこう違いがあって面白かった。原作では、バウスン将軍から剣をもらって、なぜか「御免」という言葉とともに手刀で剣を叩き折るノヴァがいる。アニメではこの叩き折りはカットになっていた。また細かい変更であるが「剣は効かんぞ」というのが、バウスン将軍からロン・ベルクになっていた。
しかし、そもそも原作の剣叩き折りが結構すごいなと思う。たしかにノヴァは闘気剣の使い手だという話だったが、そもそもチョップで剣を叩き折れるのは相当の闘気の使い手だということがあらためて思う。ま、アニメではそのシーンはなくなっていたんだが(笑)。

このあと、刃を握って血をブシュッと出しながら生命の剣を使うノヴァ。カラフルに光る剣が出されると、一瞬でシワシワになってしまうノヴァであった。なんという早さ。
しかしこのいいシーンに野暮なツッコミかもしれないが、そもそもなぜノヴァは闘気剣ではなくて、生命の剣を選択したのか?というのは、原作というか前にヒムとノヴァが交戦したときに、初撃でノヴァの剣は折れてしまうのに、そのあと平然と闘気剣を生成していたノヴァを我々は観ているのだ。今回にしても、同じ方法で闘気剣を生成するわけにはいかなかったのか?物理剣ではなくて闘気剣を使うのなら、そもそもの闘気剣と生命の剣は何が違うのだろうか。単に命を削ってしまうのであれば、生命の剣は闘気剣の劣化版になってしまうような気がするのだが。
まあ一応解釈としては、生命の剣のほうが闘気剣よりも攻撃力は高い、とかはあるのかもしれないけど。しかしそれにしても、持続時間を考えたら、このあとの兵士たちに続かせるためなのであれば、普通に闘気剣で良かったんじゃないの、と思っちゃうんだが(笑)。

あとはこのときに、超魔ゾンビの角にしがみついて、ポカポカと無駄な猫パンチを繰り出す老師というかビーストくんの姿が映るのだが(7分00秒)、なぜ老師はそんな無意味な攻撃をしていたのか。のちに真ミストバーンを短時間のバトルではあるが圧倒した恐るべきブロキーナの実力を考えると、なぜこのときにしょーもない攻撃をしていたのだろうか。ただ過去にこのブログかPodcastで触れたように、ブロキーナの戦場の状況把握力は尋常じゃないので、別にここで本気を出さなくてもどうにかなるんじゃないかと踏んでいたのではないか(笑)。

ここで回想が入り、ダイとノヴァの特訓シーンがノヴァの記憶の中で思い返される。ここで原作と同じくダイがいうセリフがよく考えると興味深い。「ただ力とか勇気とかが強いやつのことじゃない」のが勇者であると。いや、たしかに力の強さに関しては、前回のアバンとの会話でも触れていたし、まったくもってそのとおりなのだと思うが、勇気に関しては別にそれは勇気あるものが勇者でいいんじゃないのか?と思うのだ。いやしかしそれすらもダイにとっては勇者の基準ではないといいたいのかもしれない。勇気というのは、勇気なき者が手にすることで初めて意味があるとするなら、それこそダイが勇気のなさで困ったことはこれまでにほとんどなかった気もする。むしろ、自分の弱さを認めることができなかったノヴァがそれをしたことが、ここでいう勇気に相当するのかもしれない。そういう意味では、弱い者が自らを受け入れるプロセスに出てくる要素が勇気である、とこのダイの大冒険という作品では定義されているのかもしれない。

生命の剣を握ったノヴァは、全力でロン・ベルクの元を離れて、超魔ゾンビに攻撃すべく飛びかかる。だが、ここで相当にノヴァが超魔ゾンビに近づいてから、いきなり進路上に現れるロン・ベルク。まて、これはいくらなんでも速すぎないか。ノヴァの全力突進の速度より、ロン・ベルクが軽く移動した速度のほうがずっと速いのだろうか。あるいはロン・ベルクは普通にルーラかできるんだろうか。だがノヴァもルーラができる以上、そもそもなぜノヴァはルーラを使わず突進しようとしたのか。謎だ。

生命の剣を引っ込めるノヴァ、一瞬でシワシワが治った。ほんとに一瞬だったな(笑)これまた、どういう謎!?

さてロン・ベルクが星皇剣を呼び出すシーン。冷静に考えて、ここはどういう原理で呼び出しているのか。かつてバーンが光魔の杖を取り出すときに謎の亜空間から引っ張り出した気がするがあれと似たようなことなのだろうか。まあロン・ベルクの武器は基本的に何でもありなので突っ込むだけ野暮かもしれない。しかし、原作でもそうだが、なぜ超魔ゾンビに壊してもらって「手間が省けた」などというんだろうか。自分でがんばってこじ開けないと取り出せない武器というのは色々と問題があるように思うのだが。

このあと、超魔ゾンビの打撃をあっさりと避け続けるロン・ベルクであるが、このシーンのあと、超魔ゾンビを操るザボエラがだいぶ疲弊してるような声が聞こえる。待て、ただ避けるだけでザボエラが疲弊するなら、攻撃を繰り出さなくてもとりあえずロン・ベルクは避けているのが一番コスパがいい闘い方なんじゃないかと想うけど。

どうでもいいが、武器名の星皇剣にしても、星皇十字剣にしても、まったく文字の解説がないので、これはアニメ初見視聴者にはまったく字面がわからないのではないか。ということが気になった。

あと、星皇十字剣でこんなきれいにぶった切れるのであれば、わざわざ二刀流で繰り出さなくても、一発だけで倒せてしまったのではないか?と思うのだが。それともこれもストラッシュX理論で、交差点の威力が数倍になるのであれば、やっぱ二発同時攻撃が必要なのか。このあたりもよくわからない。

そして、ロン・ベルクは星皇剣を数十年以上作っている気がするのだが、ダイたちに手を貸すようになったのはこの数ヶ月の話のはずだ。「こんなことなら完成させておけばよかった」などとロン・ベルクは言うが、いやまてまて、それまでに何十年時間が余ってたんだろうと思うのだが。まあ、あんまり強い剣を作りたいモチベーションが沸かなかったのかもしれないが。

腕がぶっ壊れたロン・ベルクとノヴァの会話で、これは原作通りだが「お前たちの生きている間にはもう武器はつくれない」なる趣旨を話すわけだが、もしそもそも大魔王バーンがちゃんと倒せるなら、武器なんて必要のない世の中になるのでは?というのはわりと疑問である。いやロン・ベルクというキャラにとっては世界征服をするとかしないとかというのはどうでもよくて、単純に「武器とひとが合わさった姿が見たい」というだけなのかもしれない。しかしダイの大冒険世界ではすでに実証されているように、単にめちゃくちゃ強いキャラクターにロン・ベルクの武器を渡してしまうと、完全にもうそれだけで世界崩壊クラスの危機が起きる。それをわかっていて、ロン・ベルクはもっと武器づくりがしたいのか。

ノヴァに酒瓶をあけるよう頼むシーン。まて、しかしじゃあミストバーンとのちゃんばらにせよ、今回の星皇十字剣にしても、ずっと懐に酒を入れたまま闘っていたのか?しかも、瓶を割ることなく。改めてこのロン・ベルクという男の戦闘力が高すぎる。ミストバーンと、懐に酒瓶を入れたまま互角に戦えるというのは恐ろしい。
やっぱり、このあとの真バーン打倒の流れを考えると、メタ的、作品構成の意味としては、やはりここでロン・ベルクは退場せざるを得なかったではないだろう。だってなぁ、天地魔闘の構えもなんなら1人で突破できる可能性すらあるような…。

さて、次回予告。すでにプロモーション後のヒムの姿がめっちゃ出てるのだが。この次回予告の基準はどのへんなのよ(笑)。


【Podcast】 Cast a Radio 「ダイの大冒険」を語る