ダイの大冒険(2020)第35話が放送された。武術大会が進み、決勝戦でザムザが罠を発動させ、ダイとザムザのバトルが始まり、ザムザが超魔生物化するところまでが描かれた。
冒頭、前回からの一部繰り返しのシーンになるが、ダイとポップ、マァムの会話。ここが原作のセリフとは結構変わっていたのが印象的だった。とくに原作でポップが言っている
いままで、おれたちがピンチに陥ったとき必ずダイの額に紋章が輝いてすげぇ力を発揮してくれた。俺たちはそれを奇跡だとか正義の力だとか都合の良いこと言って当然の力のように思って戦ってきた。
でも違ったんだ。ダイの力は本当は1つ間違えれば俺たちの世界を滅ぼしてしまうかもしれない恐ろしい力だったんだよな。
だからダイの数倍の紋章パワーを持つバランに攻められながら思ったよ。世の中そうそううまい話ばっかりじゃねーよなってさ。
(後略)
という長台詞。加えて、ダイのセリフについても。あとはそれを受けてのマァムのセリフも。いずれも編集され、相当短くなっていた。音のテンポが重要になってくるアニメ版としては妥当な変更かとは思う。
逆にいうと、実は漫画版ではこのシーンは相当にテキスト情報が、短いページ数の中に詰まっていたのだということになる。改めて、そういう目で原作を見るのも面白い。
さて、ストーリーに話を戻すと、武術大会のマァムのバトルが、原作では1コマで一瞬で終わっていたものが、少なくとも3回のバトルとしてアニメでは描かれていた。3回勝ってベスト8ということは、単純計算すると、8*2^3=64人の出場者がこの大会にはいたことになる。ロモスの人口規模がよくわからないが、わりと準備期間が短そうで、かつ戦時中という色々大変な状況で開かれた大会に64人も出るのは結構すごい。
このあとベスト8のキャラクターが紹介されるが、改めて彼らの武装というか戦法を見ると、なんというか、「ガチの殺傷力高い武器」を持った人たちが多いことにびっくりする。
どういうことかというと、この武術大会は、「魔王軍に対抗しうる人材を発掘する」という表向きでザムザがロモス王を焚き付けて開催させたのだと思うが、つまりその人材発掘目的なのに、こんなガチ武装の連中を出場させていたら、武術大会で死亡または回復不能の大ダメージを負う確率が高くないのか!?
ということを私は気にしている(笑)。
レスラーのゴメスは体術だからいいけど、特に、狩人ヒルトは武器が弓なので、これが脳天なり喉に刺さったら、まず即死ではなかろうか。それを、しかも観客多数の大会の中でやってしまうのは、はっきりいって古代ローマで剣闘士が血みどろの戦いを見世物としてやっていたのと同レベルの残酷さだと思うのだが…。
フィクションの格闘大会としては、たとえばグラップラー刃牙の最大トーナメントや、ケンガンアシュラの絶命トーナメントなど、いずれも武器使用は禁止で、徒手空拳の戦いというルールがあった。それはそうだ。武器なんか使おうものなら、死亡率が高すぎる。
かといって、ダイの大冒険世界では、素手で戦うキャラは明らかに武器や魔法を使うキャラより弱い(あるいは、同じキャラでも武器の有無で強さが全然違う、とも言える)という描かれ方をしている。唯一の例外は真バーンくらいのものだ。ダイやバランといった竜の騎士にしても、剣があって初めて必殺技が可能なのだ。
そういう意味では、武器や魔法を使わないことには戦力は発揮できないが、しかしそれを対人試合としてやってしまうと、確実に死人が出るのだがそれはいいのか?ということになる。
もし戦闘力を見たい、魔王軍に対抗できる人材を発掘したいなら、普通に指定するモンスターなり魔物なりを何体倒してきたか、みたいな基準を設けて、それを達成した人を採用すればいいのではないのかと思うのだが。そうしたら魔物駆除も進んで一石二鳥だと思うし。
それを、危険な武術大会というフォーマットでやってしまうあたり、人間の命をなんとも思っていない、というか実験材料としか思っていないザムザは「合理的」な判断だけど、それを許可したロモス王は、いくらなんでも頭が悪すぎるのでは、と思ってしまう。
でろりんの本質を見抜けず覇者の冠を与えそうになり、ザムザの正体を見抜けず、しかもこの危険なフォーマットの武術大会を許可してしまうロモス王。どうしようもないおっさんだ。
閑話休題、そういえば決勝戦になってザムザが罠を発動する場面、原作では、8人の選手に宝玉を拾わせ、それを並べるとGAME
OVERになる、というケレン味たっぷりな謎演出を仕込んでいたザムザであったが、アニメ版ではきれいにカットされていた(笑)。たしかにまあ、直接に意味のない仕込みではあったものの、ザムザの性格の凝り性な部分が出ていたようで個人的には結構好きだった。
てかこのダイの大冒険の世界の言語ってなんなんだろう。原作ではときどき、文字として、謎の象形文字のようなものが出てきているが、ダイがアバンの書を読むときに漢字が読めないような印象があったり、あとは必殺技が「弾岩爆火散」みたいな漢字だからこそ決まる名称だったりする時点で、漢字かな交じり文法が存在しているとしか思えない。それに加えて、アルファベットもあるとなると、この世界の言語のカオスっぷりは想像を絶する。あとそうだ、たしかハドラーやバーンは、魔族の文字を使って、鏡で通信を送っていたシーンもあったはずだ。となると、「人間たちの独自文字」「魔族文字」「アルファベット」「漢字」「かな」少なくとも5種類くらいはあるんだろうか。
うーん、この世界の言語の進化と収斂のプロセスが気になるな…。
さて、ストーリーとしては、ダイがロモス王に放たれたザムザの呪文を背中で受け止めて、ザムザと一騎打ちをしていくシーンとなるが。
ここでもまた、ロモス王の残念なシーンを発見したので記録しておきたい。
竜の紋章を発動して、一方的にザムザを攻撃していくダイだが、なかなか決定的なダメージを与えることができない。その異変に、冷静に観察しているポップは気づいていく。しかしロモス王やお付きの兵士は、まったくそれに気づいていない。そして、こんな声をダイにかける。
兵士「勇者様チャンスです!」
ロモス王「一気に攻め込め!」
いやいやいやいや、全然それダメでしょ。ダイの戦闘力をじっくり吟味しているのがこのときのザムザなので、むしろ攻め込んではいけない。どころか、ダイはエネルギー切れの危険があるので、そういう意味でも攻めは悪手なのである。冷静にそれを分析して、ブレーキをかけようとするポップに対して、何も気づかずにむしろ攻撃を仕掛けろと大声を上げるロモス王。
これまで、人を見る目のなさ、危険な企画のリスクを見抜く力のなさを取り上げてきたが、戦場における状況判断のできなさ、についてもこの度明らかになってしまった。
はっきりいおう、ロモス王は人の上に立ってはいけないおっさんなのだ。いままでやってきたことは、人間たちを危険に晒すことしかやっていない。
序盤で、魔王軍の軍団長として侵攻してきたクロコダインは、「ロモス王、おまえの命になんの興味もない」と言っていたが、そりゃ興味もわかないだろう。
しまった、ロモス王のダメさを語っていたらだいぶ字数を書いてしまったのでそろそろ終わりにしたい(笑)。
次回予告タイトルが「超魔生物対チウ」だったのが個人的にはツボだった。あ、次回はチウがメイン回なのか!炸裂、窮鼠包包拳!