ダイの大冒険(2020)第82話「正義の後継者」が放送された。ミストバーンと正面から戦ってしまおうとするダイに対して、レオナがフェザーを投げ、戦いを止めた。そしてダイたちを先に行かせようとするポップとマァムがミストバーンに追い込まれてしまうところで、ラーハルトが助太刀に来るところまでが描かれた。
今回アニメで印象的なのは、ホワイトガーデンの広さを充分に使った、遠近感ある描き方であろうか。引きの絵で、キャラの配置や動きを見せつつ、アップで表情を抜くところを上手く組み合わせていて、ホワイトガーデンってこんな感じなのね、というのがなんとなく伝わってくる。
レオナがダイたちに正論を述べたあとの、マァムの「冷たいわ」のカットで、音とともに差し込まれる噴水が上手い。まさか、ミストバーンもバーンも、噴水がこんなに演出上で活躍するとは思わなかっただろう。
しかし、ここでミストバーンに斬りかかるダイだが、最強AI搭載のはずのロン・ベルク作のダイの剣は、どうしてダイに剣を抜かせてしまったのだろうか。それが気になる。ダイの剣はダイ以上に戦力分析が的確という話があったが、それができるなら、この場面ではダイがミストバーンと戦うことは合理的とは言えない。しかるに、剣の正しい振る舞いは「鞘から抜かせない」ではないのだろうか。さすがにそこまでは判定してくれないのか?
あと気になっているのが、このときのマァムがあまりに冷静さを欠いているんじゃないかということである。思い出していただきたいのは、かつてバルジの島の戦いで、マァムはフレイザードの挑発を受けて呪法を受けたままフレイザードと闘おうとしてしまったダイの後頭部を冷静にハンマーでぶん殴って動きを止め、さらに魔弾銃のタマを投げてフレイザードの誘爆を誘った超ファインプレー、頭脳プレーをしたのだ。それが、経験値を積んだ今、なぜそのときのような頭の切れっぷりを発揮できず、情緒に流されてしまったのか。そこまでアバンという存在がマァム(そしてポップ)にとって大切である、ということだと理解するのがいいのだろうか。
さて、レオナが投げるゴールドフェザーだがこの着弾の威力がすごい。思わずミストバーンもたじろぐほどだ。レオナの羽投げ能力、すごすぎやしないか。これはゴールドフェザーの力なのだろうか。前にザボエラがポップを狙って投げた毒矢のように、なんらかの推進力のようなものが発揮されるのだろうか。そういうのがなしにこの破壊力だとしたら、レオナの豪腕ぶりに一同脱帽だ。
って、私は今、上でゴールドフェザーと書いたのだが、このアニメのシーンを見るに、色がどうみてもゴールドではない。というかシルバーにしか見えない。えええええ!?ちょっとまて。てっきり私は20年以上、ここで投げているのはゴールドフェザーだと思っていたのだが。だって、破邪力を発揮して、なんらかの威力をもらたしているんだと、思うじゃないですか。シルバーフェザーは、魔力を蓄積してある聖石のほうですよね。なんだこの威力は。
と、ここまで書いて思ったのだが、まさにちょっと上に書いたとおり、かつてマァムが魔弾銃のタマ、すなわち聖石でつくられたもの(にギラが入っていたもの)を投げつけてフレイザードの誘爆を誘ったわけだが、あれと同じことなのだろうか?すなわち、レオナがなんらかの攻撃呪文をシルバーフェザーに込めて、それを投げつけて、その攻撃呪文の威力が周囲に放たれた、と。
というか、そうでも解釈しないとここでシルバーフェザーが出てくる理由がわからない。教えて三条先生!!
キャラクターたちのセリフでは、「フェザー」としか言っていないので、色の確定情報まではわからない。
さて異空間に場面が移るが、アバンストラッシュが炸裂して、威力78とジャッジが語るが、多分この78という数字は適当だろうと思われる。これも結局かすった程度だし、これでほんとに78のダメージがあるというのは…という話になってしまう。
そして、再びホワイトガーデンに戻り、レオナが「すべての戦いを勇者のためにせよ」と命じるところ。まさにアバンの後継者として、バチッと決まったシーンである。音楽も絵も、言うことない。ただ一個個人的に思うのは、なぜレオナは「王女レオナが命じます」と言ったのだろうか、ということだ。王女というのはあくまで人間界における肩書であって、アバンの使徒というミッションドリブンのチームにおいて重要な要素ではないと思うのだが。しかしとはいえ一方で、たしかにレオナのリーダーシップというのが、生まれながらの王女という立場に始まり、魔王軍との激戦という過程を経て高められてきた、ノブレス・オブリージュのようなものと不可分であるとも思うので、この場面では、そういった彼女の背負ってきたものの大きさが、思わず言葉として出たというくらいに捉えたらいいのだろうか。
アバンとレオナの語る回想シーンで、さらに時代をさかのぼったかつての魔王軍とアバンの戦いが描かれる。原作では、ロカ、レイラ、マトリフにセリフはなかったが、今回アニメでは3人にセリフがあった。これもうれしいオリジナル要素と言えるだろう。別途ダイ好きTVでも語られていたが、レイラは小松未可子さんがマァムと同じく、演じているそうである。
そういえばふと思ったのだが、なぜ原作のときからブロキーナはこの、「アバンと魔王ハドラーの最後の戦い」のときにはいないのだろうか。凍れる時間の秘法をかける戦いでは、マトリフもブロキーナもいたのに、最後の戦いにはブロキーナがいない。うーん、このとき何があったんだろうか。ブロキーナがいなかった理由とは。教えて三条先生!Part2。まあでもこの頃のブロキーナがいたら、勇者の一太刀じゃなくてもハドラーに勝ってしまいそうではあるが(笑)。
あと単純にダイの大冒険とゲームを比較して面白いなと思うのは、仲間が食い止めて主人公をラストバトルに送り込む、という演出は私のしる限りではゲームのドラクエではほとんどないというところだ。まあそりゃそうで、丹精込めて育てたパーティーメンバーが最後の戦いにいなかったらゲームとしてはつまらないので、ゲームではそんな演出はできないが、だからこそそこの対比で、かつてのハドラーとアバンの戦いを描いたのが、三条先生の話作りの上手さを感じる。
レオナとアバンの会話シーンに戻ると、原作になかったセリフとして、アバンが「あなたに聞いてほしい話があったので」という理由を述べるシーンが追加されていた。で、やはり二度死ぬのはごめんだといって笑うが、読者は誰もが知るとおり、このあとアバンはキルバーンに対して、負けそうになったときにメガンテを仕掛けに行く。アバンという人は、ある意味ではとんだ嘘つきというか、色々な真の思いを隠したままいつも闘っているという気もするが、良く言えば正義の目的のためには自分の命も武器だというくらいにしか思っていないという決断がすぐ取れるというか、やはりこの点、ヒュンケルの師というか、ヒュンケルと通じている。と思ったが、このあとで「ムダ死にはしない(=意味あるメガンテはやるよ)」というところで一応本音は言っているか。
さて、ミストバーンがビュートデストリンガーでダイを背中から襲うシーンだが、ここは指一本だからブラックロッドで止められたような気もする。これ、本数が多かったらポップはどうするつもりだったのか。
ダイが、レオナとゴメちゃんに行こうと声をかけるところ。ゴメちゃんがレオナの前を完全にハックして登場する。ゴメちゃんはほんとこういうところ自己主張するよね!(笑)
そしてかっこよく、止めの絵でAパートが終わるが、このあとBパートであっというまにかっこよさが台無しになるほど、ミストバーンに圧倒されちゃうんだよな。
「いいんだな」と聞くミストバーンの目のどアップが入るが、なんとここでは原作と違って、がっつりとミストの目が描かれていた。これは、面白いなと思った。
ポップがマァムに対して「ん〜ちゅう〜」というシーンは、ダイ好きTVによると豊永さんのアドリブだそうだ。いやー、ぶっこんでくるなぁ。このシリアスシーンで、このギャグ感がやはりポップである。豊永さん、さすがだ。
このあと、ミストバーンが、作戦を立てたポップとマァムに言うセリフが、ここもまた原作と変わっていた。原作では「このホワイトガーデンを私の最後の決戦の地と決めた」というのだが、アニメでは「貴様たちの墓場と決めた」と変わっていた。ここはなぜ変えたのだろうか。貴様たちの墓場であるならそりゃ動いたら墓場にはならないよなぁと思うのだが。
さて、2人とミストバーンのバトルが始まって、一発目のポップのイオが、なんというか野球の投手というか、バレーボールのスパイクというか、なんかそんなダイナミックな描き方になっていて、ちょっと笑ってしまった。いや、全然ありだと思うけど。しかしガルダンディーにイオを食らわせた頃に比べるとだいぶ成長したねほんと。
ミストバーンに2人がとっ捕まったところで、ダイたちは慌てて戻ってくるが、どうしてしかしダイはルーラ/トベルーラで来ないで、わざわざ階段を降りるのだろうか。か、なんなら遠距離でアバンストラッシュのAタイプでも放てばミストバーンから2人を解放させられる可能性もあるんじゃないかと思うが…。ここもダイは、ポップとマァムのピンチを見て、冷静な戦術判断ができなかったのかなぁ…。
どうでもいいが、次回予告でバーン様の手元のワインの瓶が割れていないのが映っていた。あれ、前に割ってませんでしたっけ。おニュー?どんだけ飲むんだ。ロン・ベルクといい、魔界の強者は飲んだくれで闘うのをなんとも思わないのだろうか(笑)。
【Podcast】 Cast a Radio 「ダイの大冒険」を語る