エンドオブオーシャン代表のMasakiです。
今日のnoteでは、Podcaster(Podcast配信者)として、ソーシャルオーディオ・アプリのClubhouseの大ブームの中で感じたことを記録しておきます。
率直な感想は、「ああ、音声の領域にまでついに破壊的サービスが来てしまった」ということです。動画については、YouTube、TikTokが絶大な威力を誇っていますが、音声だけというプラットフォームは正直なところ(少なくとも日本では)覇権的なサービスは存在していませんでした。VoicyやStandfmといったスタートアップの音声配信サービスはありますが、ぼくの観測範囲の中では一部のエッジの尖った人だけが配信して、それを聴く人が散見されるというレベルでした。しかしClubhouseは、1月最終週というたったの1週間あまりで、爆発的に認知度を上げ、普及してしまいました。なぜそこまで流行ったかについては、優れた考察を書いている方が多くいるのでこのnoteでは端折ります。
いずれにしても今、強烈で中毒的な音声プラットフォームが今ここに存在している。まだ日本全体で見れば一部の人たちの中でのブームではあるものの、その1人あたりの利用時間の長さはかなり驚異的なものではないかと思われます。利用者割合が増えていくのは時間の問題でしょう。
話を本題に戻すと、Podcasterとしては、数年に一度の地殻変動が起きたレベルだなこれはと思います。
これを、聴取者(リスナー)と配信者の両面から考えてみましょう。
まずリスナーとしては、「ライトな」リスナーにとってみると、これは機会の増加といえるのではないでしょうか。家事をしながらや、移動時間中などに暇つぶしやゆるくトークを楽しめることが価値に感じていた人にとっては、わざわざPodcast番組をフォローしたり新着配信をチェックしたりしなくても、自分が好きな著名人や芸能人をClubhouseでフォローしておけば、その人が登場するルームを聴くことができます。あるいは、関心あるテーマをフォロー(正確にはクラブにジョインした状態というのかな)しておいてもよいわけです。
Podcastは、YouTubeなどと違って、動画がないからこそ、家事や移動などの他の作業中のながらに使える便利さがあったわけですが、そこでリアルタイムでしかもその瞬間しか聴けないというプレミアム感を伴った配信が流れてるようになれば、そこにシフトする人がたくさん出ることはおそらく避けられないのかなと思います。
そして配信者の観点で見ると、私が観察した範囲で起きていることは「配信者のモチベーション低下」です。具体例を出すと、私の好きなPodcastで、MCが1人で配信しているとある番組があります。1月中旬までは、およそ週に1-2本、コンスタントに更新していました。ところが、1月下旬からピタリと更新が止まってしまったのです。実はそのMCはClubhouseにアカウントをつくっており、その方は日々Clubhouseで数時間を過ごし、1日あたり複数のルームで登壇者として話されているようでした。
起きている事実だけから、本人の内心を推定して結論づけるのは、妥当かどうかはわかりませんが…。とはいえこの2つの事実「Clubhouse登壇が続いている」「Podcast更新が止まった」の関係の中に「配信モチベーションの低下」を読み取ることは比較的自然なことかなと思います。モチベーションではなくて、単純に時間がなくなったのかもしれませんが、もし高いモチベーションがあれば限られた時間の中でもなんとかPodcastの配信をするとも考えられるわけなので、総体としてはモチベーションの低下が起きたのではないでしょうか。
言い換えるなら、「Clubhouseによって、音声配信欲求が満たされてしまった」と。
Clubhouseが音声配信ならびに交流欲求に関して、これまでPodcast(あるいは音声配信サービス各種)が持っていた地位をリプレイスしていくとするなら、既存のサービス提供者にとっては脅威となるでしょう。
先日ちょっと聞いた話では、Clubhouseにハマった結果、YouTubeやTikTokの利用時間が減ったという人もいるようです。これも納得です。音声だけなら動画とは食い合わないかというとそんなことはなくて、YouTubeやTikTokによってたとえば「つながり」を満たしていた人にとって、Clubhouseがより適応した、あるいは中毒性の高い体験をもたらしてくれるのならば、そこは乗り換えが起こるのは自然なことなのだと思います。
と、Clubhouse脅威論みたいなものを書いてきましたが、実はPodcasterとして、Clubhouseが早く下火になってほしいかと思っているかというと、そんなことは全然ないんです。
理由は2つあって、1つはまず自分(たち)がPodcasterとしてはまったく無名であること。Clubhouseの魅力の1つは有名人の楽屋裏トークを横で聞けるような構造になっていて、そこで可処分時間の取り合いが起きているわけですが。そもそも私のやってるPodcastなんて実リスナーは5人くらいだと思うので(笑)、そもそも失うほどのリスナーを持っていないわけです。ということで、むしろClubhouse普及によって、スマホで音声を聴く習慣を持つ人が増えたら、無名Podcasterにとっては追い風にすらなるかもしれません。
もう1つは、自分(たち)のやっているPodcastがテーマを持っていて、それを2人で収録しているという構造があること。上述した更新を止めてしまったPodcastのMCさんは、1人番組でした。誰からもお尻を叩かれることがなかったら、Clubhouseを始めてそちらで充分にトークできたら、Podcastをわざわざ収録する行為が取れなくなるのは仕方ないと思います。しかし、自分たちのPodcastは2人で、毎度収録後に、次の収録予定をスケジュールするという週次の習慣が確立しているので、そこが機能している限りは更新を続けていくことができる確信があります。私も、共同配信者も、いまは1日何時間かClubhouseを覗いてますが、どのみち2人とも無名人で(笑)、トークルームを開くレベルではないし、その意欲も低いので、これがPodcastのモチベーションに影響する可能性は低そうです。
個人的予測としては、1人配信者&ある程度の著名人である方のPodcast(あるいは他音声プラットフォームでの配信番組)はClubhouseによって、けっこう押しのけられていって、更新が止まっていく可能性があると思っていますが、2人以上のレギュラーが定期的に配信する形であれば、そうそう変化はないと思います。知名度が低ければ、その人たちがClubhouseでルームを開いたところで誰も来ないわけなので、Clubhouse自体を宣伝なり誘導なりの場として使うことが難しそうですが…。そこはやはりClubhouseの録音禁止な「その時限りのプレミアム感」とも相性は悪いですし。無名人が使うには不向きです。
そういうわけで、今私がやっているみたいに、Twitterなりnoteなりといったテキストメインのソーシャル・サービスで情報伝達なり、情報のストックづくりなりを、のんびりやっていくのが精神衛生上もよろしいのでは思う次第です。
さて、長々と自説展開しましたが、最後に自分のPodcastの宣伝です(笑)。漫画/アニメ「ダイの大冒険」についてのみ語るマニアックなPodcast「Cast a Radio」、毎週配信しています〜。購読しなくてもいいので、もし周囲にダイの大冒険がお好きな方がいたら、よかったらお伝え下さいませ〜!